社会科教育(明治図書)1999年度連載

「学校はもともとコンビニなのだ」

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  4月号 「大安売りに勝つ定価販売」

  5月号 「セブンのフランチャイズ方式の強み」

  6月号 「セブンの『基礎基本』から学ぶ」

  7月号 「本部と加盟店をつなぐOFCの役目」

  8月号 「ダイレクトコミュニケーション」

  9月号 「情報システムの活用」

 10月号 「『この子』の捉え直し」

 11月号 「『仮説』と『検証』 その共有化」

 12月号 「システムは変えるためにある」

  1月号 「良い教材を開発しても」

  2月号 「子どものために・・・」

  3月号 「子どもの反応に対応して」


 大学院でのレポート作成のために八文字屋で手にした「セブン-イレブンの魔術商法」(エール出版社)溝上幸伸著 にはまり、セブン-イレブンの本を買い集めました。16冊の本は、今でも本棚に並んでいます。

 「変化への対応」と 「基本の徹底」  全てはこの言葉に集約されています。

① 4月号

「大安売り」に勝つ「定価販売」

 

┌──────────────┐
│「変化への対応」と     │
│「基本の徹底」           │
└──────────────┘
 セブンーイレブンの総帥、鈴木敏文氏が語る理念である。
「セブンーイレブンはこの2つのスローガンの下に高成長を続けてきたといっても過言ではなし、トップから現場までこのスローガンの下に統一されている。今後も変わることのないセブンーイレブンの最大の理念なのである。」
         (『セブンーイレブンの魔術商法』 溝上幸伸著 エール出版社)
                *
 2つのスローガンは
「社会の変化に主体的な対応」と
「基礎的基本的な内容の徹底」
と置き換えることもできる。
 文部省の言ってきたことを忠実に守っていたのがセブンーイレブンなのである。(真似をしたのがどちらなのかは定かではないが……)
 セブンーイレブンは、そのチェーン店数・売上高・日販額ともコンビニ業界のトップを走り続けているばかりではなく、小売業の売上高第2位イトーヨーカ堂(親会社)を抜き、第1位のダイエーに迫ろうとさえしている。
            *
 昭和30年代に生まれたスーパーは、低価格攻勢により百貨店を追い抜き現在に至った。しかし、
「図体が大きくなればなるほど、小回りが利かなくなる。画一的なサービスと、ピントのはずれた商品政策で、次第に消費者の支持を失っていった。」                                                (同上書)
「スーパーの場合、しばしば特売品や大安売りなどで客を呼び込むが、あれはそれだけ買われたのではスーパー側が経営的に成り立たない。特売品を目玉に、それ以外の商品も購入してもらって、初めて利益が出るわけだ。」                                                            (同上書)
 時代の流れを察知し、核家族化、高齢化社会、独身者の増加など、消費環境の変化に機敏に対応するコンビニが、定価販売でありながらも勝ち続けるのは当然のことなのかもしれない。
            *
 学校はそもそもが寺子屋的な「個」または「小集団」を対象とした小売店であった。それがいつからか、「学校」という抽象化したスーパーに変わってしまった。
「待てばお客はやってくる。」
「商品さえそろえておけば、お客は満足するはず。」
 それでも、地域・社会や家庭の教育力を背景にデーンと構えて待っていられる時代はよかった。
 個々の子どもを観て、その実態を把握しながら瞬時に判断し創造し変化していかなければならない時代、そこに現在の学校がおかれている。
 まさに、コンビニの存在そのものなのである。
┌───────────────────────────────────────────────────┐
│ 今、学校は、特売品・大安売りで上辺だけの楽しさを持ち込む場になっていま│ │いか。                                                                                                                                                               │
│ 消費者である子どものニーズを機敏に捉え、自らを変えながら、定価販売(本│
│来の学びの楽しさ)で勝負する場となっているであろうか。             │
└───────────────────────────────────────────────────┘
 セブンーイレブンの消費者の存在を強く意識した商法、消費者本位の姿勢に学ぶべき点は実に多い。

② 5月号

 セブンのフランチャイズ方式の強み

┌─────────────────────────────────────────┐
│ コンビニ業界のトップを突っ走っているセブンーイレブンは、│
│ フランチャイズ・チェーン方式をとっている。           │
└─────────────────────────────────────────┘
 他のコンビニがセブンーイレブンを抜けないのは、ここに大きな理由があるのではないかと考える。変化への対応の神髄がここに隠されているような気がするのである。
 チェーンストアは3つの形態に大別される。
●レギュラー・チェーン……全部の店舗が本体会社の直営店。
●ボランタリー・チェーン……同業者が組合を設立して同等な立場で共同仕入れ、共同配送などを行う。
●フランチャイズ・チェーン……本部と加盟店からなる。本部は同一規格の商品を調達し、加盟店に供給する。また、統一された店名やロゴの使用権を提供するほか、経営ノウハウなどの情報を提供する。加盟店はこれらの提供を受けることで営業を行い、本部に対してロイヤリティを支払う。(セブンーイレブンは98%がこの方式である。)    
        *
 私たちが目にするほとんどのセブンーイレブンは、独立した経営を行っている一店舗なのである。
 本部であるセブンーイレブン・ジャパンが提供するストア・コンピューター、POSレジスターなどは莫大な費用を投じた最新の設備である。
 しかし、これらを駆使して、また本部が定めた新規推薦商品(年間およそ4000点になるという)のリストを参考に、店の顧客のニーズに合わせて一日3回の発注を行っているのは、加盟店なのである。     

          *                 
 本部が最先端の技術を駆使して、全店舗に一斉に商品の搬出を行うことはできる。その方が商品の発送は早い。しかし、そうはしない。情報は与えるが、発注の決定はあくまでも各店舗に委ねられている。
 セブンーイレブンのこの方式は次の2点を述べている。
 1つは、最先端の技術を駆使した情報(全体像)よりも、最終的には顧客の前に立つ者こそがそのニーズを捉えられる、ということ。顧客の個を重視しているのである。
 もう1つは、各店舗に日々発注を行わせることによって顧客のニーズを捉える力を鍛えている、ということ。変化に対応し考えるオーナーの土壌を築いているのである。
「変化への対応」は、本部だけでなく、各店舗で日々繰り返されているのである。この集団がセブンーイレブンを支えているのである。だからこそ長い間成長し続けることができたのであろう。 
┌────────────────────────────────────────┐
│ 教師は子どもを自分のレギュラー・チェーン化してはいない│
│だろうか。直線的で指示は早く伝わるが、それらは一現象的な│
│もので、そこに進歩などみられない。                                                 │
│ 教師は子どもをフランチャイズ方式で育てなければならな     │
│い。適切な情報を与え、判断は子どもに任せる。子どもの主体│
│的に判断する力こそを鍛えなければならないのである。               │
└────────────────────────────────────────┘
                         参考(「セブンーイレブンの魔術商法」溝上幸伸著 エール出版社)

③ 6月号

 セブンの「基礎・基本」から学ぶ

 セブン・イレブンの総帥鈴木敏文氏は、時代の変化、それに伴う生活者・顧客ニーズの「変化への対応」を迅速に行ない、仕事のやり方を変えるのでなければ小売業は成果を上げられないと強調する。その一方で、
┌───────────────────────────────────────┐
│ 小売業あるいは小売業の各業態には、それぞれの業態として│
│の基本があり、それらはいかに時代が変化し、顧客ニーズが変│
│化しても不変であるので、その業態に身を置く人はその基本を│
│守らなければならない                                                                                       │
└───────────────────────────────────────┘
                 (セブン・イレブンの「商い」を科学する 岩淵明男著 オーエス出版社)

と強調する。

 小売り基本四原則として本部が加盟店に指導している原則がある。
①売れ筋商品を欠品しないようにする   「品揃え」
②どこよりも新しい商品を揃える     「鮮度管理」
③明るい清潔な店づくり    「クリーンネス」
④親身な接客サービス    「フレンドリーサービス」

 

 どれも当然と言えるようなものばかりではある。しかし、それぞれの原則を徹底的に追求し、その追求のノウハウを繰り返し加盟店に説明し、協力を求める。その地道な繰り返しにこそ大きな意味があるのである。(原則を守るための方法は日々刻々と変化させ進化させている。)
  ④については、五大接客用語というものがある。「いらっしゃいませ」「かしこまりました」「少々お待ちくださいませ」「ありがとうございます」「あいすみません」である。これをバックヤード(店の事務、在庫整理などを行う楽屋裏に当たる部分)の壁にかけておき、アルバイトやパートはもちろん、オーナーまでが、店に立つ前には必ず声を出して読むことが求められている。
 セブン・イレブンではオーナーの主体性は極力尊重される。しかし、この基本については妥協は許されない。徹底的に理解を求める。 
              *
 原則を方法と混同し、方法に囚われて変化することのできない堅物が存在する。長い歴史の中に守られた学校現場ではそれでも生きてこれた。しかし、その事実が今日の学校を築き上げてきたのである。
「自由」が騒がれると、マニュアル化することは極力嫌われる。学校でのあいさつのマニュアル化など言語道断と言われるだろう。
 しかし、本当だろうか。
┌───────────────────────────────────────┐
│「行動」を前提としなければ、工夫など生まれない。創造など│
│存在しない。意欲を待つことも大切ではある。しかし、それを│
│待ってだけいては、育てる場、達成感を与える場を取り上げて│
│しまうことにはならないか。               │
└───────────────────────────────────────┘
 子どもがあいさつをしないと嘆き相手に意欲を求める前に、教師が率先して行えばいいのである。あいさつを返してくれる子は必ずいる。
 行動するためにまず自分にマニュアルを課す。そこから新しい発見が生まれ、興味・関心も生まれてくる。
 当たり前ではあるが、今現場で最も忘れられていることである。
 有田和正先生の名言を思い出す。「楽しいから笑うのではなくて、笑うから楽しいのです。」 

④ 7月号

 本部と加盟店をつなぐOFCの役目

 フランチャイズ・チェーンでは、本部と加盟店をつなぐ役目は殊更重要となる。セブンーイレブンではOFCと呼ばれる人員がこの役を担っている。担当する加盟店(一人で7~8店舗を直接担当)を週に最低2~3回は巡回し、経営相談、商品の選別・陳列などの総合的なアドバイスを行っている。
┌───────────────────────────────────────┐
│ 加盟店は各店舗独立した組織体であり、同じ組織の直営店に│
│対するようには命令できない。あくまで指導であり、説得によ│
│り相手を動かすしかない。                   │
└───────────────────────────────────────┘
「加盟店を説得するためにセブンーイレブンがOFCに求めているのがまず観察力である。観察に基づいて分析を行い、どう対応すべきか提案していくには課題を見つけることが先決だ。そのためには常に問題意識をもっていなければならない。
 問題意識は、OFCが自分の担当するセブンーイレブンをどのようにしたいのかという目標、ビジョンを明確にすることで初めて持つ可能性が出てくる。その店の現状を正確に掴むことで、目的やビジョンとのギャップを測り、そこから課題を浮き彫りにし、どうすれば課題をクリアできるかという解決策を指示できるのだ」

   (セブンーイレブンシステムズ 国友隆一著 日本実業出版社)
             *
 客観的で様々な膨大な量のデータの収集は、発注に使われるだけでなく、加盟店のオーナーを説得するためにも重要なものとなっている。
 命令ではなく説得――それは、事実を伝えるだけでは行えない。
 基本四原則のクリーンネスの徹底では、OFCは巡回する際に毛ばたきを携行し、店に入りホコリを見つけたらすぐに毛ばたきでホコリを払う。(叩くのではない)落ちているゴミを拾う。曲がった陳列は整える。率先して自分の体を動かして行う。
 OFCは、ただ指示したりアドバイスするだけではなく自ら率先してやってみせる。そして加盟店の従業員にどうすべきかという方法を示す。どれくらいやればいいかというレベルを示す。範を垂れることによって行動を促すのである。 
 相手とその現状を正確に掴み自ら課題を持ち、理屈だけでなく行動で示すことによって、説得することができるのである。
┌───────────────────────────────────────┐
│ 支援ということばを誤解してはいけない。子どもに追究させ│
│たければ、まず教師が追究する楽しさを子どもの前で表現する│
│ことから始めなければいけな い。公開研の場などで子どもが自│
│主的に活動しているからと、それだけを見て真似してはいけな│
│い。そこに至るまでの教師の指導をこそ学ばなければいけない│
│のである。                                    │
└───────────────────────────────────────┘
 セブンーイレブンは各店舗のオーナーの変化に対応した考える発注によって成り立っていると前々号で述べた。しかし、オーナーが考える状況を築いたのは本部であり、OFCなのである。オーナーの変化への対応は、顧客のニーズに対してであるが、それを相対化し全体像を築く本部の対応への対応でもある。
 その有能なOFCがどのように育てられているのかについては、次号に譲る。

⑤ 8月号

 ダイレクトコミュニケーション

 600億円を費やし通信衛星を活用した「これ以上のシステムはアメリカのNASAしかない」という高度な情報網を持つセブンーイレブン。本部から7362店舗(97年度)に瞬時に連絡が付く。本部と加盟店をつなぐOFCにも同様である。
 しかし、ここで実に奇妙なこともしている。
         *
 OFC(店舗指導員、約1000人)は毎週火曜日、全国から東京・芝の本社に集められる。
 午前9時から11時半までのFC会議では、商品本部から商品開発した経過やその商品のポイント、販売促進、各事業部からの伝言。午後からは分科会、その後は地域ごとミーティング。夕方6時まで一日中会議を開いていることになる。
 FC会議には鈴木敏文会長や社長が出席し話をする。経営者がOFCに直接話しかけるのである。普通の企業ではこういった情景は少ない。
 これをセブンーイレブンでは、ダイレクトコミュニケーションと呼んでいる。現在、交通費・宿泊代は年間25億円にもなるというのに、74年に15店をオープンして以来、ずっと続けられているのである。
 ここまで会議にこだわるのは、それによって情報を共有するためだ。報告に終わらず、問題点や課題を摘出し、どう対応したらいいのか、その対応についても共有しようとしているのだ。
 同じ仕事をしている同僚や上司と直接会話をすることで、彼らが何を考え、どういう思考プロセスを辿って発言するかが目の前でわかる。
 こうした討議を経て、自らも問題解決の思考方法を身につけることで、加盟店の要望や苦情に対する即応力を身につけることができるし、店舗が抱える問題点を指摘することができる。     
 理論(基本)と現場(応用)の往復運動を繰り返しているのである。
┌──────────────────────────────────────────┐
│a  全体での理想・意志の統一・ 情報の共有                                                │
│b  現場人同志の会話の場を設けることのよって、実践を通して語 │

│ り合う場の設定                                                                                                        │
└──────────────────────────────────────────┘
 2つの重要性を明確に意識して会議を持っている。そして、ここでも「基本の徹底a」と「変化への対応b」が守られているのである。情報システムの良さを知り尽くし、最先端に居ながらにして、なお人と人との繋がりを基本においている。
       *
┌────────────────────────────────────────┐
│ 会議が「報告会」となっていないだろうか。細分化された分│
│掌部での予定・処理活動報告会になっていないだろうか。細部│
│のプロがそろっていても、全体像を持って細部に大幅な変更を│
│行う、そういう場に変えなければいけない。                           │
│ 会議は、教師の問題解決力を養う場でなければならない。 │
└────────────────────────────────────────┘
 子どもに問題解決能力を育てる前に、我々は目の前の対象に問題解決の姿勢で当たっているであろうか。
 セブンーイレブンは、情報を伝える速さを備えつつあえてそれを使わず、伝えることを通して組織全体の問題解決能力を育てているのである。絶えず内なる集団を鍛え続けているのである。

⑥ 9月号

 情報システムの活用

 セブンーイレブン本部は、第五次総合情報システムに600億円を費やした。ISDNでも不満で通信衛星を併用し処理速度を高めた。これにより本部と各店舗がパソコンで動画や音声の入出力が可能になった。
         *
 これらによって、現場の各店舗は、午前10時の発注を一時間遅らし11時にすることができた。顧客の変化に対応する余裕をオーナーに与えることができた。考える発注の時間を確保し、仮説を持ったより正確な発注が可能となったのである。
        *
 高度なシステムで本部は各店舗に実に手の行き届いた情報を伝えている。
 例えば天気予報。各店舗の周辺20㎞四方のメッシュ情報(天気・気温)に加えて、県別や地域別、それだけでなく、行楽地への途中にある店であれば行楽地の天候(それによって売れ行きが左右される)。
 また、商品の流れ。最近の日別、商品別の動向、2時間単位ごとの商品の売れ行き動向など。
 そして、現在テレビで流れている商品のCM。オーナーが自分の家でテレビを見られない時間的な問題をさりげなくフォローしている。そのCMの放送期間は明示され、発注の重要な資料となる。CMを見て商品を購入する現代の若者にリアルタイムでの対応ができるのである。情報の速さ・影響力を最も重視しているからこそそこに行き着くのである。
 情報システムは、単品管理、仮説を持った的確な発注のために何度も改良を加えつくりかえられている。
       *
 情報は活用することによって、その意味が高められる。勿論過去を語るものにも意味はあるが、今現在を伝えるものにこそ生きた情報本来の姿がある。そして、それこそ変化を導く情報となりうるのである。
       *
 学級通信に、子ども達の行事での感想を載せ、各家庭に配る。そこでは楽しい思い出が語られる。また、月歴が並べられ、家庭での意欲が高められる。
 それらは、勿論意味のあることである。
 しかし、
┌─────────────────────────────────────────┐ 
│ 保護者が学校での子どもの動きに対応して、動き出せるものと

なっているであろうか。                                                                │ 
└─────────────────────────────────────────┘ 
 リアルタイムで学校の様子を伝えるには、有田和正先生のおたよりノートの実践に勝るものはない。保護者は、その日の学校の様子をその日のうちに知ることができるからである。
 リアルタイムでなければ意味のないことが多い。
 保護者の方々は、子ども達と一緒に動いているという一体感を感じられた時にこそ、学級を動かす存在となりうる。そして、そういう親御さんに見守られた子ども達は、必ず伸びるものである。
 セブンーイレブンに店舗崩壊(学級崩壊)が少ないのは、変化に対応する場の確保、変化する時の楽しさ・意味が現場の者に理解されているからではないだろうか。
┌───────────────────────────────────┐ 
│ 今、我々教師は、保護者にどれだけ生きた情報を提供しているであろうか。│ 
│ 保護者の協力を得られる生きた情報を!                       │ 
└───────────────────────────────────┘ 

⑦ 10月号

 「この子」の捉え直し

 セブンーイレブンでは、レジを開く際にはお客の年齢別、男女別のボタンを押さなければ開かない。売場では、POS(販売時点情報管理)システムにより、一商品が売れるごとに単品別・時間帯別・客層別・棚割り別のデータがインプットされていく。これは本部のコンピューターに記録され、商品の売れ行き、店舗別の売れ行きなどがデータ化される。
 本部は全国の市場動向をとらえ、生産、商品開発へと活用する。
 各店舗は、全国的な売れ行きを参考に仮説を持った発注に活用する。

 それらは、全て一つ一つの商品の売れ行きによって変わる。
 店舗数約7300店。一店あたり一日1000人の来客。つまり、一日730万人の消費者動向を把握している。国内だけでなく世界の流通業界でも文句なくトップである。
        *
 商品本部が新規に推奨した商品の発売後の動きを捉える。売り上げが芳しくない場合、発売して2・3日後に推奨を取り消してしまう。売れる可能性の少ない新商品を大量に発注する店がでないようにである。7300店という図体の大きいシステムを構築しながら動きは実に機敏である。
┌────────────────────────────┐
│ 情報は変化である。情報活用とは、変化を活用することであ│
│る。それは、他者への対応の変化であり、自己変容である。  │
└────────────────────────────┘
       *
 学校現場での単品管理(管理という言葉が引っかかるが)は、児童理解であろう。個々の子どもの成長を捉え、子どもへの指導・教師自身の自己改革に生かすことであろう。
 子どもを如何に捉えるか。
 教師はその一点に集中しなければならない。
 まさに、長岡文雄氏の言う「この子」である。
 子ども一人の存在についてどこまで語れるか。教師は見取っているか。
 教師の存在はその一点で問われる。
 私たちは、授業を通して、いや学校生活全体を通して、子どもの変化に対応しながら、「この子」の捉え直しを日々繰り返していかなければならない。日々の捉え直しの中でこそ、その力を鍛えていかなければならないのである。
 子どものある一面の成長は、個人の全体に必ず変化を伴う。一面を観て全体へ視野を拡げ、絶えず全体像から捉え直さなければいけない。
 上田薫氏の言う「個的全体性」である。
 この見取り直しを鍛える場面が、教育現場には少ない。授業後の事後研で教材論を語っても、授業での「この子」について語られる場面は極めて少ない。佐藤学氏が現場での授業研究のあり方を問い直しておられるのは、まさにそこなのである。
┌─────────────────────────────┐
│ 子どもの記録は、評価する(データ化する)ためのものではな│
│い。それをもとに教師自身の子どもに対する捉え直しを行い、子│
│どもへの指導の変更・教師自身の自己改革に生かされなければな│
│らないのである。                           │
└─────────────────────────────┘
     参考(セブンーイレブンシステムズ 国友隆一著 日本実業出版社)

⑧ 11月号

 「仮説」と「検証」その共有化

 第五次総合システムでは600億円を投じ、マルチメディア技術を駆使し新商品情報を加盟店のオーナーや従業員が簡単にアクセスできるようになったセブン・イレブン。時代の変化、技術革新に合わせて、その時代その時代の最先端技術を導入した情報通信ネットワーク・システムも導入してきた。POSシステムもその一つである。また、天気情報・気温動向・CM等リアルタイムで加盟店へ情報を提供している。
        *
 これらは、加盟店の「仮説を持ったより的確な発注」の実現のために行われている。
┌───────────────────────────────┐
│「仮説を持った発注」と実売の「検証」を毎日繰り返すことで、その│
│個店のある地域での「顧客ニーズ」を的確に把握するための技術・ノ│
│ウハウを蓄積し、「仮説を持った発注」の「精度」を高めるための努│
│力をしている。             │
└───────────────────────────────┘
   (セブンーイレブン「商い」を科学する  岩淵明男著 オーエス出版社)
 販売予測が『仮説』であり、仮説の実行とは『発注』であり、実売が『検証』である。
 それでは、発注はだれが行うのだろうか。オーナー一人で決定するのだろうか。
            *
 セブンーイレブンは、発注の分散化を積極的に進めている。加盟店のオーナーだけでなくパートやアルバイトにも発注を任せるようにしている。つまり、情報を積極的に活用させた発注による仮説と検証で、顧客のニーズを受けとめる力を鍛えているのである。
 仮説と検証を繰り返すことによって集団そのものを高めていくことにねらいがある。
 変化への対応を繰り返す「考える集団」はこうしてつくられている。   
         *
 班ごと各自のテーマを持って追究して最後に発表会をして終わる。班ごとの関連性がないために響き合わない総合的学習。ただ今流行中である。
         *
「発注をこのように分散化した場合、ただ、各担当者が自分の担当するカテゴリーや商品について情報を集めて分析するより、各担当者の集めた情報をもちよって共有化したほうが、より効果があがる可能性が高い。分析や仮説をもちより、そこで分析や仮説を検討し、共有化してゆく。それによって仮説の精度があがる。各担当者が連繋した形で品揃えができ、その分、売れ筋商品の欠品が少なくなる。売れない商品を発注する確率が低くなる。」
       (セブンーイレブンシステムズ 国友隆一著 日本実業出版社)
 発注は細分化しても、そこには全体での共有化が常に存在している。
            *
┌─────────────────────────────────────────────┐
│ まず分担してスタートし、ゴールで確認し合うのではなくて、分担して情報を集め・分析や仮説を│
│もちより、全体で分析や仮説を検討し、共有化してゆくことが大切なのである。                         │
└─────────────────────────────────────────────┘
 全体像を見失わず、上田薫氏の言うところの「動的相対性」を意識できるか。そこにかかっているのである。
 つまり、固定化された最善の仮説を追究するのではない。あくまでも「個」を捉え、変化に対応して捉え直すことができる自分であり続けるために行うのである。

⑨ 12月号

 システムは変えるためにある

 セブンーイレブンの努力は、「自己否定してでも、顧客のニーズに応えるためのあり方を実現する」という考え方から始まっており、しかもそれを徹底しようと、つねに組織ぐるみで検証している。 
 客の立場に立ったサービスの追求は、小売店には大変な苦労がいる。高品質の商品を安く売れば客は喜ぶが、小売店での利益は低くなる。卸値を下げてもらわなければ商売はなりたたない。
 従来のシステムでは限界がある。
        *
 そこで、セブンーイレブンがとったのは、生産方法や物流のシステムを変えてもらい、高品質の商品を安く供給してもらう体制をつくることだった。システム改革は大変な労力のいる作業だが、やればやっただけ、やった人にだけメリットがある。
┌──────────────────────────────┐
│ 一つの目標(商品開発)のために、システム全体を改革する。    │
└──────────────────────────────┘
 一つの商品は、素材を調達する問屋、(容器・中身などを)作るメーカー、それらを運ぶ物流など、いくつもの企業、いくつもの段階を経て、ようやく店頭に並ぶ。
 セブンーイレブンは、自社の目的とする商品の開発に向けて、それぞれの段階ごとに、メーカーや業者を選定し、彼らが組んでセブンーイレブン用に商品を開発してくれるように依頼するのである。
 それぞれの業者は、これまでのつきあいや親会社との関係、さらに供給する商品のライバル関係まで含めて、従来の仕事の「和」や「手順」を、セブンーイレブンのためだけに大きく変えなければならないことになる。               (『セブンーイレブンの秘密』 西村脩一著 こう書房)
          *
 理念だけでは業者は動かせない。
 7000店を越えるセブンーイレブンの販売力がそこにある。年間経常利益1000億円を超える№1の小売り実績がある。
 さらには、POSデータによる細分化された情報力がある。メーカーは独自で消費者調査などを行っているが、セブンーイレブンによる時間帯別、地域別、期間別、顧客の年代別・性別の詳細な日毎のPOSデータにはかなわない。
「これまでメーカー優位だった産業構造は明らかに情報をもつもの、すなわち先端技術で武装した小売店側にイニシアティブが移行しつつあるようだ。」      (同上書)
       *
 学校現場では、どうか。
 文部省の答申でも、学校に多くの選択権が移行されようとしている。
 総合など、自由な発想で行える場さえ設定されている。
 しかし――しかし、である。
┌───────────────────────────────┐
│ 今、私たちは自己否定してでも、子どもの成長に応えるためのあり│
│方を実現しようとしているであろうか。子どもの立場に立ったシステ│
│ム改革まで視野に入れているであろうか。                                              │
└───────────────────────────────┘
 目の前の子どもたちの訴えを捉え、システム全体を流動的に改革すべきところまで学校はきている。
 朝自習をさせながら職員打ち合わせをする、そういう当たり前であった事実さえも問うべきものとなっているのである。

⑩ 1月号

 良い教材を開発しても……

┌────────────────────────────────┐
│ 売れるものをつくっても、それだけで売れるとは限らない。売れるも│
│のを売れるように工夫してはじめてサービスが完結する。               │
└────────────────────────────────┘
                     (セブン・イレブン流心理学 国友隆一著 三笠書房)
             *
 最近のお客は陳列にボリューム感がないと、まったく同じ商品でもなかなか買ってくれない。ボリューム感がないと、その商品の価値と無関係に、お客は貧相なイメージを受けてしまうのだと言う。
 どんなに商品を仕入れてボリューム感を出してみても、売れれば当然商品は減ってくる。ボリューム感はなくなってくる。そこで、デイリー(弁当、おにぎりなど毎日配送される鮮度の短いもの)商品の陳列の仕方を、次のように三段階にしていると言う。
①  納品時。顔の高さを中心に棚の上から下、右から左まで商品で埋め尽くす。
②  中間時点。肩から下の棚に商品を集め、左右の陳列幅を狭めて商品をまとめる。
③  次の便の納品前。商品をへそから上に集める。下段は空きになることもある。左右の幅をさらに狭める。

 このように、こまめに商品を移動させ、少なくなったら少なくなったなりにボリューム感を出し、買いやすく、手を出しやすくしているのである。
             *
 コンビニのお客は目的買いが多い。

 セブン・イレブンでは、90%が滞店時間が5分以内という。
 お客が今欲しいと思うものを捉え、フェイスどりしなければならない。
 そのため、客層、時間帯によって、商品を並べる場所を変える。
 例えば、昼にはレジカウンターに近いオープンチルドケースの下の段に焼きそばやスパゲティを陳列しているが、夕方から同じ場所にはたこ焼きを並べたりする。また、新商品を次々に導入したり、同じ商品でもフェイスどりをかえたりして、日々様々な組み合わせを行い、いつ行っても新鮮さに満ちた店内を築き上げている。
           *
 私は、長らく有田実践の追試を行ってきた。良いネタであっても、それだけで授業がうまくいくとは限らないと悟るまでに長い年月がかかった。
 店頭に良い商品を並べておけば、それだけで商品が売れるというものではないように、多くの場合、教材はそれだけではその是非を問えない。
 どんなにすばらしいネタであっても、そこに一教師の工夫・人間性、子どもとのつながり、学級集団の力、子どもの育ち、それらが脈々と息づいていないところでは、そのネタは生かされず、思ったような授業にはならない。
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│ 教材開発は、その完成された作品としての価値よりも、目の前の子供│
│と社会の変化に対応して、開発していくその過程に意味がある。変化に│
│対応して子どもと教材の捉え直しをし続けることにこそ、その意味があ│
│るのである。                                                                                                           │
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 有田氏の授業のネタは、鍛えられた有田学級の子どもたちの存在を抜きには語れない。良いネタが生かされるように、あらゆるところに布石がはられている。学級づくりが行われている。
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│ 良い教材を開発しても、それだけで授業がうまくいくとは限らない。│
│良い教材を良い教材として授業にかけられるように子どもを鍛えていて│
│はじめて授業が成立する。                                                                                  │
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⑪ 2月号

 「子どものために……」

 コンビニ№1セブン・イレブンの親会社イトーヨーカ堂の姿から述べていく。
 試食販売員を長く勤めた桑原聡子氏は著書で次のように述べている。
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「どーして、スーパーって、お客さんから見えないところがすごく汚いの?……それに従業員の入り口というのは、どうしてあんなにみすぼらしいんだろう。もちろん、例外はあるけれど。……いくら商品をキレイに並べて売場をゴージャスにしても、そういうのを見ちゃうと、本当にガックリくる。もし、お客さんが楽屋裏を見たら、幻滅してもう来てくれなくなるかもしれない。それくらいひどい。」 
「従業員用トイレはなんともわびしいところが多い。それなのにお客さん用のトイレをのぞいたらピカピカとキレイで、あまりの差に愕然としたことがあった。」
「だいたい汚いトイレだと手を洗う時間も惜しんで早く出たくなるから、他の社員さんたちも、チャチャッと手を濡らしておしまい、とあまりキレイに手を洗う雰囲気ではないんですよね。」
  桑原氏は、ここでは次の言葉を引用してまとめている。        
「ある本に、お客を満足させるためには、まず従業員が満足していなければならないということが書いてあった。」
            *
「感動的だったのは、イトーヨーカ堂のトイレに入ったとき。初めてここのトイレに入ったとき、個室から出てきて手を洗い、ドアを開けようとしたら開かない……なあに、何のことはなかった。洗面所で手を洗ってから、赤外線のボックスに手を入れて、ブザーが鳴るまで殺菌すれば、ドアのロックが解除される仕組みになっていたのです。ここまで徹底しているのは立派。」
          「お客さん、味見してって!」桑原聡子著 オーエス出版社    …部は沼澤が省略
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│ 子どもを満足させるためには、まず教師が満足していなければならない。 │
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 勿論、場合によっては子どものためにと教師が必要以上の無理をすることはあってもいい。しかし、それはあくまでも時と場合によるのである。一方法ではあっても、絶対条件ではない。
 子どものためにと、遮二無二頑張る者がいる。あらゆるものを子ども中心にしようと、支援という言葉を誤解しながら、教師の「自分」を押し殺すことに美学を感じている者もいる。
 誤解である。教師は透明な存在ではない。個性をもった一人間なのである。
                *
 満足とは恐ろしい。自分を誤解し、高慢な態度を生じることもある。時として、自戒の念が必要である。人間は、分かってはいてもできないこともある。そういう弱い面を必ず持っている。
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 満足と自戒。両面が必要とされる。教師は常に謙虚でなければならない。それは、一方的な受け身、我慢を強いられる者としての謙虚さではない。
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│  アノネ                                │
│ 親は子供をみているつもりだけれど │
│ 子供はその親をみているんだな            │
│ 親よりもきれいな                                     │
│ よごれない眼でね       みつを                  │
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             「しあわせはいつも」相田みつを著 文化出版局

 教師の無理な姿勢、子どものためにと自ら背負った悲痛な姿を子どもは見抜いている。子どものためによかれとした努力も、その嘘臭さに疲れて、しらけてしまうのである。
 教師は自分に満足できる環境が用意されているであろうか。また、子どもの意見、子どもの個性、子どもの……それらと同じくらい教師の「自分」が認められているであろうか。そうであれば、そこにこそ教師の弱さをチェックする機能が必要とされるのである。

⑫ 3月号

 子供の反応に対応して

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│ 商品を通して、お客との対話            │
│ コンビニの商法はこの一点に集約される。│
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 授業も同じである。教材を通して子どもと何を対話するか、できるか。そこにかかっている。教材を教えるのではなく、教材を通して子どもと対話するのである。この視点に立てば、テスト時間でさえ子どもとの対話は行える。
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 子ども達にテストを配り、この時とばかりに教卓で仕事を始める教師がいる。テストの時間は、子供の反応に対応して個々に指導を行える貴重な時間なのである。その時間を利用して別の仕事を行っていてはいけない。それでは、分からない子はずーっとわからないままであり、書き終わった子も見直しなどするはずもない。当たりはずれだけに関心が向き、学習がクイズ化されてしまう。
 教師は、当然、テストを配る時点で子供達の力を把握しておかなくてはならない。早めに終わってあくびを始めるのは誰か。30分間もこの問題を考えさせることが難しいのは誰か。この問題につまずくのは誰か。机間巡視の時間は仮説の検証の時間でもある。
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 テストにおける時間的な無駄は2つある。第1は書き終わってしまった子のあくびの時間。第2は分からない子の考えられない時間。どちらも思考がストップした状態である。これらをその子その子によって生きた時間にかえていかなければならない。
 書き終わった子には、問題の見直しをさせたい。ところが、教師が「見直しをしましょう」と何度呼びかけても、多くの場合子どもは見直しをしたふりをするだけである。このような時は、教師が机間巡視をしながら間違いを指摘していくと良い。
「この問題、惜しいよ。」
「右半分で2問間違っているよ。」
「惜しい、3問間違っています。」
 最初は具体的に、次は範囲を区切って、最後は全体で。これを四月から個に応じて段階を踏んで行っていく。すると、うっかりミスや読み間違いが少なくなるばかりではなく、集中力の持続が驚くほど伸びる。
 間違いを指摘された子が、それを訂正できたときには、テスト中であっても大げさにほめる。その行為をほめるのである。結果としての点数は二の次である。
「今、2問間違いを見つけたよ。」
「見直ししたら分かったよ。」
 こういう言葉を子供達からどれ程引き出せるか。自分の努力の後の変化をどれだけ自覚させることができるか。教師の机間巡視による所大である。
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 どうしても分からない子には、その場で個別指導を行えばいい。それではテストの点数に客観性がなくなるというのであれば、点数などつけなければいい。分からないまま長い時間苦痛に耐えて座り続けるよりも、解き方を思い出し一問一問確実に解ける実感を会
得できる方がいいに決まっている。
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│ 同じ問題を配っても、子供によって難しさは違う。それをどのように│
│個々に応じた形で与えていくか。その思考過程にどのように関わりをも│
│っていくことができるか。まさにコンビニ精神が必要とされる。            │
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 テストによる子どもの力の評価は、テスト時間終了時のものだけではいけない。テスト中の個々の子供の思考過程と対話し、その変化に対応した「個の捉え直し」による評価が必要なのである。教師は、テスト時間中には何度も机間巡視を行い、子供の思考過程を探るべきである。