特集「絶対評価」の到達規準をどう創るか 社会科の到達規準をどう創るか(高学年)

  事前に告げて共通理解できるもの


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│ 到達規準は、指導要録に対応した形式で、保護者に説明しやすい形で、子│
│ども・保護者に事前に知らせておけるようにしたい。                                         │
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 今回の指導要録では、個人内評価を工夫することもあげられているが、観点別学習状況の評価を基本とした評価を発展させ、目標に準拠した評価が一層重視されることになった。学習指導要領に示した目標の実現度をみていく必要性、一人一人の児童生徒のよさや可能性や進歩の状況をみていく必要性が強くあらわれている。
  教育課程審議会・指導要録改訂の解説で、児島邦宏氏は、
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│ 評価は、保護者と学校・教師がお互いに理解し、共有することによって、│
│その後の子どもの指導・支援に協力して当たることを可能にしてくれる。教│
│師と保護者が手を結ぶための核ともなるものである。それだけに、通知表の│
│工夫・改善をはじめとして、評価についての考えや規準・方法等について、│
│教師・保護者・児童生徒が相互によく理解し、子どもを支援することに有効│
│に役立てることこそ必要だとしてい る。                 p73       │
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  新指導要録ー学力評価はこう変わる 教育課程審議会答申の解説と資料 学校運営研究2001一月号臨時増刊(明治図書)
と述べている。
 私の体験では、保護者は、自分の子どもがどこでつまずいているのか、どういう点が優れているのか、これから何に力を入れていけばよいのかを知りたがっている。4観点の3段階評価、評定だけでは、ここが伝わりにくい。より具体的なものを望んでいるのである。
 絶対評価の到達規準は、より具体的であればあるほど分かりやすい。第三者にも伝わりやすい。反面、具体的であればあるほど、必然的にその項目は多くなる。
 学校、学年、学級の実体に合わせて毎年それを変更しながら実施することが可能か。また、そうすることが本当にいいのか。
 現場におけるジレンマは広がる。 
 相対評価の時代は、他者のプライバシーもあり、評価資料の提示が困難というバリヤがあった。今回の改訂は、それをなくして保護者と子どもに当たれと言っている。逃げ道のない場に私たち教師は追い込まれている。アカウンタビリティーの波が押し寄せているのである。
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 通知票と指導要録は違う。
 しかし、指導要録の開示などを考慮すると、それらに大きな違いがあってはいけないと私は考える。通知票には、あくまでも3段階による4観点の評価、そして評定を入れる。そして、その評価に至る根拠を明確に説明できる絶対評価の到達規準をいれなければならない。大きく指導要録からはなれた形の表記による通知票になってはいけない。その子の良さを認める形の教育的配慮のなされた通知票であっても、事実を伝える場所がなければ、これからの親は納得しない。ロマンと現状の区別が求められている。
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 絶対評価における到達規準をどのように創るか。それは、その評価が何のために行われるかによって違ってくる。
 だから、ここでは、通知票記入のための到達規準に絞って考えることにする。つまり、子どもの学習状況の到達度評価を、保護者・子どもに伝えることを第一義として考えていく。
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 社会的な思考・判断(第5学年)について考えてみる。
 この観点は、教師が評価するにあたっては4つの中でもっとも難しい。子どもの具体的な姿・内面の変容が見えないと評価できないからである。
 では、保護者にとってはどうか。保護者には「社会的な思考・判断」という抽象的な言葉でも意外に伝わりやすい。しかし、子どもの何を評価されたのか、これから何をどうしていけばよいのかというところは見えない。
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│【社会的な思考・判断】                                  │
│   我が国の産業と国土の様子に関する社会的事象から学習の問題を見いだして  │
│追究・解決し、社会的事象の意味を考え、適切に判断する。                  │
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   小学校児童指導要録の改善等の通知(抄)
    別紙第1 小学校児童指導要録に記載する事項等別添1ー1 各教科・各学年の評価の観点及びその趣旨 

 これを細かくとらえていくと、5年生社会科の社会的な思考・判断とは、
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│①我が国の産業と国土の様子について│  
│②社会的事象をとらえる                │
│③学習の問題を見いだす                │
│④追究する                               │
│⑤解決する                                  │
│⑥社会的事象の意味を考える           │
│⑦適切に判断する                      │
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ということになる。
 このようなものは、単元の指導計画や指導案の本時の計画の中にはよく見かける。しかし、子どもたちに、このような形でなげかけられ、意識づけられることは少ない。おそらくはないはずである。なのに教師は、こういう観点で評価をしている。そして、その結果を残す。
 到達規準をもつということは、
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│「先生は、このような方法(見方)でみんなの力をみる。」             │
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と事前に明確な形で説明することが必要である。
 到達規準を事前に告げずに評価するということは、大学受験の会場で5科目の試験をしておきながら、合否発表の段階になって、
「今回は2科目で評価しました。」
と告げるようなものである。
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  ①~⑦を「自動車をつくる工業」で考えると次のようになる。
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│①わたしたちが使う工業製品の中から                                    │
│②自動車生産についてとらえる                                                │
│③生産の仕方における自分なりの問題・課題をみつける   │
│④自分の力で追究する                                                                 │
│⑤自分なりの結論をもつ                                                             │
│⑥自動車生産の意味を考える                                                     │
│⑦適切に判断する                                                                          │
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 他の工業製品の生産についての同様な調べ学習、また、伝統的技術を生かした工業や、他の産業との比較を通しての学習などは、学年の目標に対するものつまり評定で評価するものか、応用としてこの観点に入れるべきかも明示すべきであろう。
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「④自分の力で追究する」  
 これ一つをとっても、方法面から、本、電話、手紙、インタビュー、インターネット等、時間面から、授業中、学校、帰宅後、登下校時、休業中等、様々な項目が考えられる。どの方法でいつ追究したものか。いろんな方法で取り組んだのか、一つの方法で継続的に取り組んだのか。単元終了時に自己評価させる場が必要となろう。
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 子ども一人が①~⑦のすべてにおいて力を発揮するということは、私の経験からいってほとんどない。どの段階で大きく力を発揮したか。どういう面での意外な伸びが見られたか。教材を通しての子どものとらえ直しこそが日々の評価である。その継続的な評価を目に見えるものとして保護者に伝えること、それが到達規準による評価なのである。
 ①~⑦のどれでもいい、子どもの動きを具体的に指摘できるかが我々教師に迫られてくる。
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│ 到達規準は、教師・子ども(保護者)の共通のものとして、事前に確認して│
│おくべきものであろう。                                 │
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 問題は、その規準をどこまで具体的に表すことができるかである。文部科学省が国立教育研究所に委嘱して標準案を検討しているという。各学校に多様な実践が認められていながら、ある面では学校間格差をなくさなければいけない。大きな問題に直面しているのだと、あらためて感じた。
 第5学年の目標を見て、不勉強な私は疑問に思う。社会科の目標は、理解・態度・能力で記述されている。しかし、評価に関わる段階では4観点で行うこととなっている。ここがクリアされればもっと分かりやすいものとなると思うのであるが……。
 保護者が読んでも分かりやすい指導要領が待たれる。そんな時代がやってきたようだ。


 「授業研究21」(明治図書)2001 12月号