確実な習得を図る算数・数学科の「重点指導」の開発
全体像を捉えさせて
子どもの思考過程に即した上での系統立てた教材編成が求められている。
それは、決して内容の厳選を意味するものではない。厳選を行うことによって減らされた内容で子どもの思考が閉ざされ、分断された学習になってしまうことがあるからである。
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◆小学校一年算数の「たしざん・ひきざん」の学習は、表1のように構成されている。
※注: ○数字は、啓林館「わくわくさんすう①」での単元
表2から、1~3は、「4.繰り上がり・繰り下がり」の学習へとつながっている。
極端な言い方をすれば、「1.10以内」と「4.繰り上がり・繰り下がり」がわかれば、1年生の「数と計算」の学習は成立したかの印象を与える。これは、教える側の論理で、子どもの側、学ぶ側の思考過程を軽視している。
1、2、3とそれぞれの学習が理解できて、4まで進めば全てが理解できるというのが教える側の論理である。
ここでは、「5、1位数での計算」(注:沼澤作成)をせずに「4,繰り上がり・繰り下がり」の学習をさせている。5を踏まえての4でなければ子どもの確かな理解にはつながらない。
また、⑪「ひきざん」の学習で、数図ブロックなどを使って,減減法か減加法のどちらの方法で解くかという学習になっている限り、子どもたちに、10の位から引く(引かなければならない)ということは強く意識されない。
10の位から引かなければならないということを意識させるには、 15―3=12 のような計算(1位数どうしのひき算)をさせたあとに、繰り下がりのある計算に入るべきだと考える。
そして、パーツである計算技能を習得させた上で、どの計算で解くのかを選択する目、全体像を捉えて解き方を選ぶ目を育てることが必要となる。そのためには、単にその問題の答えが出せたかどうかを問うのではなく、教科書に載っていないような問題を加え、全体像を捉えさせながら、どの解き方で解くのかという意味を考えさせることができるもの(プリント①②参照)が必要となる。
解く技能の習得と、解き方の選択は違う。
4つの解き方(表3)のそれぞれの学習を行っているときに、それぞれを計算して解くことができるのと、どの解き方にあたるのかを選び、仲間わけをしながら解くことができるのとでは、次元が違うことを自覚したい。
【こんな間違いを生まないように】
⑦ 16-6=10
10 6
10から6をひいて4 4と6で10
⑪ 15-3=12
10 5
10から3をひいて7 7と5で12
授業研究21(明治図書)2008 5月号