小特集「すごい先生」と尊敬を集める教師の基本技   3年・スーパーの工夫の導入から

 遊び気分の導入で授業をつくる

 二学期社会科の導入。
 教科書などを使って商店と大型店の違いを確認した。そして、知っていることを発表させ、板書していった。
 商店街での様子を話す子。大型店で買い物をした時のことを話す子。子どもたちは、どこにどんな店があると楽しそうに発表してくれた。     
 授業の最後に次のように話した。
『スーパーには、やさしい人ばかりが選ばれて勤めているのです。ただで物をくれるやさしい人さえいます。』
 すると子どもたちは、
「お店は、物を売る所だから、ただでくれる人はいない。」
「そんなことはない。」
「うそつき~。」         
「それは、泥棒になっちゃうよ。」
と言い出した。しかし、少しすると、
「おいしいですよ~と言って、食べさせてくれるところでしょう?」
「ウインナーをくれた人がいたよ。」
「コロッケを食べさせてくれたよ。」
と楽しそうに話し始める子が出てきた。
「ただでくれるの?」
「先生、本当?」
『どういう所にあるの?』
「食べ物を売っている所。ヨークでウインナーを食べたよ。」
「試食って言うんだよ。」
『ヨツバにもある?』
「ないよ。そこには」
「電気を使う物を売っている店だからだよ。」
 板書した大型店名に試食をおいている店に○印、おいていない店にХ印を書いていった。いろいろ意見が出るうちに、どうやら食べ物を売っている店にあるようだということになった。
              *
 【終わりの会】
『今日は、先生からみんなにプレゼントがあります。』
「ワーイ。」
『すばらしい宿題です。』
「エ~~~ッ」 「いらない~。」
『試食を食べてくることです。』
「ワーイ。ワーイ。」
『お家の人が買い物に行く時に一緒に行っていっぱい食べてきてください』
「でも、お母さん、仕事の帰りに買ってきちゃうよ……。」
「今日、行かないかもしれないよ。」
『市内の学校のきまりで、お家の人と一緒でないと大型店には行っていけないことになっていますが、特別に友達同士でもいいことにします。』
「うわーい、ヤッタ~。」
「先生、かっこいい!」
「そんな宿題でいいの? お母さん信用しないよ。」
「怒られちゃうかもしれないよ。」
『んじゃあ、お店の様子も見てきて日記に書いてくればいいよ。』
「いっぱい食べてもいいの?」
『これは、立派な宿題です。堂々としてきなさい。』
「ワーイ!」
 楽しいことは子どもたちの活動を導く。木曜日という平日にも拘わらず、下校後たくさんの子が誘い合って試食を食べに行った。
             *
 私は、授業のオープンエンド化を取り入れ授業づくりを行ってきた。追究を導くことができる教材を子どもに与え、追究の記録である子どもの日記帳を中心に学級通信を書いてきた。
  一見遊びのような形で始まった本実践の試食調べも、メニュー、置き場所、曜日・時刻による量の変化、お店の人の対応などからその目的を考えるに至るなど豊かな学びを得る頃になると、導入の教材の意義を保護者の方々が理解して下さり、やがて保護者を巻き込む追究が生まれるようになった。すると、保護者の賛同を得て、「遊んでいるみたいだけど勉強なんだ。」「いろんなことがわかってきておもしろい。」子どもたちの学習観に大きな変化が生まれ、疑問をもって追究する授業の楽しさが実感できるようになった。
 試食の追究は、有田和正先生からお聞きしたお話をもとに行った。こうした教材をさりげなく発掘することができ、子どもに合わせて使い分けることができる先生こそ本テーマの「すごい先生」である。私のような者にとっては、永遠の目標である。
     

 「社会科教育」(明治図書)2005 4月号 

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