社会科好きにする授業開きネタ

 探究好きにする授業開きネタ
 5年生の社会科は、産業別に学習していく中で、日本と世界、そのつながりなどを捉えさせていくことになる。
 各単元の導入だけでなく、一年間の学習の布石となる授業ができないかと考えた。そして、最初の授業を、
「昔高くて、今安いものは何か」
というテーマで行うことにした。
 家庭で聞いてきて、発表するだけのことである。ただそれだけなのであるが、これは、意外性があり、子どもたちから実に多くの発見を導き出すことになった。調べやすく、発表しやすく、その中に知的感動がともない、一年間で学んでいく内容の多くが、子どもたちの口から出てくることになった。

 

 授業実践から
①授業前
             ※注『 』は教師 「 」は児童
 4月9日、新任式・始業式から3日目。終わりの会の雑談で、昔高くて今安いものなどがあるかと話をした。ほとんどの子は、昔と今の値段についてなど考えたことはない様子。中には、(そんなものはない。先生はまたへんなことを言い出した。何を言っているのだろうか)という顔をする子も見られた。しかし、授業とは関係なさそうだからと笑顔で遊び気分の子が多かった。数名の子は、「バナナが高かった」だの「肉が高かった」だのと言い始めた。『本当?良くそんなの知ってるね』と答えると「おじいちゃんが言っていた」と主張した。
『それは、すばらしいおじいちゃんだ。さすが、○○君のおじいちゃんだ。』とほめた。
『今日はそれを宿題にしよう。たくさん聞いてノートに書いてきて下さい』
 ほとんど遊び感覚で行った。難しい宿題でなかったと喜ぶ子が多かった。
「昔とは、いつ頃のことですか。」
という質問には、
『するどいなあ。先生は、昔のことは良くわからないから、大体でいいよ。お父さん・お母さんが子どもの頃、おじいちゃん・おばあちゃんが子どもの頃、どっちでもいいよ。』
 おおまかに捉えさせた。その方が家庭で聞きやすい。もともと正確に時代をとらえるための学習ではない。家族に聞くといろんなことが分かる。調べ方を教わる。調べることの楽しさを教わる。それが目的である。四月のこの時期は、聞いてノートに書いてきて、発表させることが大切なのである。
「何のノートにですか?」
「これは、何の勉強ですか?」
 当然のように聞かれた。
『ええと、社会のノートを使っていなかったから、じゃあ、社会のノートにしようか。』
 かくして、子どもたちの社会のノートの第一ページに書かれることになった。子どもたちは最初の1ページ目には緊張して、ていねいに書くということを見越している。最初のページに書かせることは、一年間の授業で何度も確認できるようにするためでもある。
 このくらいの適当さがあると、子どもたちは遊び気分で調べてくる。教科のわくにはめてしまうことが窮屈さを生んでしまうようだ。
 最後に、さりげなく、バナナや肉の現在の値段を聞く。ほとんどの子は知らない。「フィリピンバナナ」「台湾バナナ」という名前を知っていても、それが国の名前であるということにさえ気づいていないのが現実である。

 

②授業から(4月12日) 
 子どもの調べてきたことを座席順に一つずつ発表させていった。
  氷、砂糖、たまご、‥‥‥
 物の名前だけでなく、理由や当時の様子を説明して答えた子には、家の人からの聞き方、そして発表の仕方が良いとほめた。すると、発表はどんどん長くなっていった。発表の仕方を鍛えるためにはうってつけであった。  

 おじいちゃん・おばあちゃんから聞いてきた遠足や入院時のバナナやメロンのありがたさの話は実にリアルでおもしろかった。          

 板書は、発表順ではなく食料品と機械・電気製品、その他に分けて書いた。
 発表が一通り終わってから、じっと黒板を見つめた。
「先生、何しているの?」
『何か感じない?』
 こういう曖昧な発問は低位な発問である。しかし、それでも、これはわかる。
「先生、食べ物が多いね。」 
「機械も多いよ。」
「電気製品て言うんだよ。」
と、話し始めた。そのうち、
「食べ物は、外国から買っているものが多いようだ。」
と言い始めた。
「そういうのを輸入という。」と知ったような顔をして言う子も出てきた。『外国から買ってくるのを輸入って言うの? 黒板に書かれたもののうち、輸入品が多いと思うものの名前をあげて下さい。』
 バナナ、パイナップル、メロン‥‥‥輸入品らしきもの(?) の名前が出てきた。出てきたものに青チョークで丸をつけていった。
「米」
「米も外国から買っているの?」
「そうじゃないの。」
「いや、違う。ねえ、先生。」
『えっ、そうなの。じゃあどうして安いの』
「たくさん余っているから安いんだよ。」 
『たくさんあると安くなって、少ないと高いんだね』
 ※これについては詳しく説明を加えたが、ここでは省く。
『米って、どうして余っているのかなあ』
(減反という声が聞こえる。『へえ~、すごいね』程度で切り上げた。)
「パンの方がおいしいよ。」
「昔はあわやひえを食べていた。」
『それ、何?』
「え‥‥‥知らない。」
(曖昧な知識の確認。)
『昔の魚と今の魚は?違わないよね』
「昔の魚はしょっぱかったそうです。塩がたっぷりついていて、本当にしょっぱかったそうです。」
『今の鮭もしょっぱいよ』
「いや、うす塩だよ。」
「生の鮭もあるよ。」
「しょっぱい方が安いよ。」
『どうして昔の鮭は塩をたっぷり使っていたのかなあ』
「腐らないようにじゃないの。」   →運輸・通信「宅急便が伸びた訳」
<原則的にどの子の意見も認める。自分の意見を発表させることが目的であって、この時点で無理に正解を求めようとはしない。一年間の授業で確認していけばいいことである。>
『食料品は輸入しているから安いみたいですね。では、電気製品はどうして安いの?』
「やっぱり、輸入しているからじゃないかな。」
「日本の工場で作っているんじゃないの。」
「ナショナルがあるよ。」
「日本で作っているよ。」
「昔から作ってはいなかったんじゃないの。」
「昔は作っていなかったんだ。きっと。じいちゃんの時、ラジオだけだったそうだから。」
「昔は、日本に工場が少なかった。今は、工場がたくさんできて、たくさん作っているから安い。」
┌──────────────────────────────────┐
│ 昔高くて今安いものは、次の2つにまとまるようですね。  │
│ ☆ 外国から買ってきたもの                       │
│ ☆ 日本で作るようになったもの                 │
└──────────────────────────────────┘
『なかなかするどいなあ』
「先生、これ社会の勉強だよね。」 
「おもしろかった。」
「もっと聞いてくるよ。」 
 授業の最後に、聞いてきたけどノートに書いてこなかった子に対し、詳しいことを思い出せなかったことを確認してから、
【大切なことは、ノートにしっかり書いてくること。】
と教えた。調べる活動は表現活動がともなって初めて力がつくのである。

 

 探究好きにさせるには
 探究好きにさせるには、まずは子どもたちの身の回りから調べさせるようにしなければならない。
 段階を踏まずいきなり本やインターネットで調べさせたりすると、実生活が入らないため、うわべだけの学習で終わってしまい、知識のある子どもだけが活躍することになる。生活の中で、手と目と耳と足を使ってじっくり考える子が活躍できない。
 子どもたちの生活場面での体験や身近な人々との関わりを大切していくことで、進んで取り組む姿勢を育て、興味の持続を図っていきたい。そして、生活を見つめ、自ら疑問を発見し、解決していく子を育てていきたい。
 そのためには、
・書くことの大切さ・そのおもしろさに気づき、書くことによって考えを深める子ども
・話し合いを通して互いの考えを伝え合い、学び合う子ども
を育てていかなければならない。
 本実践は平成5年のものです。詳しくは「5年生を追究する子に育てる」沼澤清一著・明治図書をご覧下さい。

 

  「社会科教育」(明治図書)2004 4月号