わたしの教材発掘 読者とのツーウェイ 

 コンビニから学ぶ『川下から川上へ』

 

「この製品はどこから運ばれてきたのだろうか?」 
  3年生のスーパーの学習で、製品を目の前にして子どもたちは考えました。
「このお魚は、どこからくるのですか?」
 2年生生活科のまち探検で、子どもたちは尋ねました。
 製品は、作っている人・とってくる人たちから、それらを運ぶ人たちの手を通して、店で売る人たちに送られてきます。
 子ども達は、商品の流れを通して多くの人々の仕事・その苦労を学んできました。
 店頭で売る人々の工夫について、商品をどのように並べるか、どこに並べるか、鮮度を保ちながらどのように売るか………など、子ども達と一緒に追究してきました。
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 しかし、「セブン・イレブンの魔術商法」(溝上幸伸エール出版)を読んで、私の視点は逆転しました。
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 今あるものをいかに売るかという狭い視点でしか見ていないことに気づかされたのです。川上から川下へと商品が流れていく過程を楽しく捉えさせる。それで満足していました。前書を読んで、それだけではいけないことに気づかされたのです。
 この不景気の中でも儲かっているのは、川下から川上へと流れていく商法です。つまり、販売する者は、製造者が作った製品を売ることに徹するのではなく、お客さんを前にして売れる商品を考え、それを製造者に作らせるということです。そして、今あるものをいかに売るかというのではなく、今売れる商品をいかに仕入れるか、ということなのです。
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 商店を流通の最終段階として捉えるのではなく、その出発点として捉えさせるために、コンビニを教材として、次の発問を考えました。
┌─────────────────────────────┐
│①お店の人は、いつ商品を注文しているのでしょうか?                 │
└─────────────────────────────┘
 子どもたちの反応の予想は、
「お店が閉まってから」
「朝、お店を開けるまでの間」
 発注と販売を分けて考える子がほとんどでしょう。また、
「ずうっと先まで、もう注文してある」
という長期計画型。そして、
「作っているところで、決められている」
という川上依存型も多いことでしょう。
┌───────────────────────────────┐
│②その注文は、何をもとにしておこなわれているのでしょうか?        │
└───────────────────────────────┘
「売れてなくなったものを注文する」
という商品の補充型。
「その季節のもの」
 こういう発表からは、
「今度必要になるもの。例えば、夏の終わり頃だったら、秋のものなんか。」
という発表につながるはずです。そして、売る側の立場に立って「考える」ことができるはずです。
 ①を話し合えば、発注から製品が届くまでの方法と時間に目が向きます。その回数の重要性にも気がつくはずです。セブン・イレブンが一日3回の発注をおこなうことの意味と、その方法と工夫が見えてくるはずです。
  ②で子ども達は、発注の仕方について視野を広げることになるはずです。
 セブン・イレブンでいえば、どこよりも詳しい天気情報・気温動向の活用、学校の行事予定表など幅の広い情報収集、コマーシャルの活用、POSシステムによる単品別・時間帯別・客層別・棚割別の売れ行きデータの活用などを通して、どの商品をどのように発注するかに力をおいています。
 そこには、売れる物を発注していく店の「仮説」が存在します。
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 子ども達は、店は大きくてなんでもそろえてあるところが一番もうかっていると考える傾向にあります。
 しかし、日本で一番もうかっている(売上高1位)のは、8000店舗を越す小店主の集まりであるセブン・イレブンなのです。通信衛星でつながって瞬時に全店舗の売り上げ傾向などを把握することができる小さなコンビニ集団です。情報活用の神髄がまさにそこにあります。
 お客さんと一番近い所から全てがスタートしているコンビニの仕組みを通して、物の流通について新しく視野を広げられることになると思います。
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 下学年の担任が続き、授業にかけることができない日々を送っておりますが、情報の収集は継続しています。
 川上が川下を直接把握するということでは、アサヒビールの「フレッシュローテーション」について興味を持っているところです。

 

 「授業のネタ 教材開発」2000 10月号

コメント  
     発想の逆転                                 編集長 有田和正
 わたしどもの考え方は「川上から川下へ」ということに慣れてしまっている。この考え方を、コンビニ商法を学ぶことによって、逆転させようというのである。
 意表をつかれる。だから、「これは面白い」ということになる。
 不景気と言われながら、売り上げを毎年伸ばしている企業があるのだ――ということを、企業の人々は学ぶべきだ。いや、学んでいるはずだ。学んでいない大企業(中小企業も)が、時代に乗りおくれていることを、わたしどもは新聞等で知らされている。
 沼澤さんは、最先端のコンビニ集団に学び、それを教材化し、授業をしようとしている。こんな教材を提示されたら、子どもたちは驚き、店に見に行ったりしながら一生懸命調べることだろう。
 教材開発するとき、いちばん必要なことは、「常識を疑ってみる」ことである。常識をゆさぶられる情報(本など)を入手することである。いい教材である。