コミュニケーションを深める面接法 担任と保護者の場合    

     子どもと保護者の事実をもって語る  

 面接は、通知表配布時のクラスでの保護者会、保護者の方が用事で学校に来られた折りの担任との短い会話、街で偶然出会った時など、広く捉えることができる。
 意外な場面で出会い思わず長話になることもあれば、時間がなくてほんの一瞬という場合もある。
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<ある学芸会の日の教室での出会いから>
【連絡帳】学芸会御苦労様でした。幼稚園の時よりいきいきしていたTを見てうれしかったです。洗濯も途中だし、帰ろうかと思ったところ、先生がいらして、
「一年間で、こんなに絵がうまくなるなんて、すごいですね。」         
というのを聞いて、          
「そういう見方もあるなあ。他の学年のも見ていこう。」            
と考えなおし、5年生と6年生の劇と歌と2年生の踊りをみてきました。良かったですねえ。6年生の歌をきいた時は涙がでてきました。5年生の劇をみた時は、兄の方が今4年生なので後一年でここまで成長するだろうかと思いました。養護のを見ないで残念でした。Tが一番おもしろかったと言っていました。キョンシ-の動作は、愛敬があって1年生にぴったりでしたね。キョンシーの踊りを毎日私もTと踊っていたので、本物を見れて楽しかったです。    Sさん(Tのお母さん)   

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 学芸会当日、私はステージの脇や幕の陰で荷物運びや舞台設定をしていた。たまたま荷物を取りに教室に寄った時にSさんにお会いして、『2年生の絵は上手ですね。1年生は、やっとかいたってくらいですね。来年になったらああいう絵をかけるようになるんですね。』というようなことをお話した。私にとってはほんの一瞬の出会いであり、瞬時に感想を伝えただけである。
 しかし、考えの深い方は違う。
 実行に移される。
「今」の段階で他の子と比べて、「今」で全てを評価するのではなく、子どもの「今」を見て、これからの成長を楽しみにする。
 これこそが、一人の人間をまるごと受けとめることになるのであろう。自分の子どもの発表が終わると一目散に帰る方々とは視点が違う。上学年を見て1年生の我が子の明日の姿として捉えるのである。
 連絡帳に書かれたSさんの文は、そのまま学級通信に載せた。こんな素晴らしい見方を私一人で止めておくのはもったいない。多くの保護者の方々と共有しなければいけない。そうすることが、コミュニケーションの土台を築いていくのである。
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 私は今まで保護者との面接がある時には、その場の雰囲気を何によって築こうかと、その場を中心に考えてきた。
 しかし、そうではないことが分かってきた。問題はそこに至るまでに何をしていたかなのである。そういう当たり前のことにやっと気がつけるようになってきた。
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【連絡帳から】 ………話は変わりますが、最近、音読を一日ごとにせず、三日分まとめてというふうにズルをしています。悪知恵も成長しています。私の方からももっと言いかけますが、先生の方からも一言お願い致します。                 

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【連絡帳への私のコメント】

 お母さんも「三日分のごはんを一度につくるよ」と話をしてみてください。
 どうなるか、楽しみです。

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  ………ところで、音読の件ですが、沼澤先生のアドバイスを使わせてもらって、
「音読をまとめてするんだったら、お母さんも、お家の仕事もまとめてしよう!」 
と言ってみますと、          
「だめだ!ごはん三日も四日も前の食ったら、ハラをこわすも!」        
と言うので、             
「だったら、Aも音読も毎日、少しずつでもいいからやろう! でないと、音読読むのも、くされるよ~。」       
というと、              
「それとこれはちがうと思うけど、すっかなあ~いちおう、毎日。」       
  いちおうという言葉が気になりますが、どうにか気持ちに変化をつけさせるきっかけになった様です。先生、アドバイスありがとうございました。子育ても、見方を変えるというか、違った方向から見てみるということも大切なのですね。                Bさん(Aくんのお母さん)
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 勿論こういうアドバイスができるのはユーモアを理解できる親御さんと子どもさんの存在を抜きにしては考えられない。しかし、その陰に学級通信・おたよりノート・保護者からの連絡帳での学級・家庭・担任の繋がりがあるのも事実である。コミュニケーションは、受けとめ、そして、伝えることの繰り返しによって深まるのである。
 こういう話題をもって臨む保護者との面接は楽しい。当然コミュニケーションは深まる。4月の最初の段階では難しいであろうが、私は、極力
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│ 子どもの事実・保護者の事実 を具体的にもって面接にあたる  │
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ことにしている。
  有田先生は子どもの事実から語ることの大切さを主張されてきた。授業しかり、論文しかり、である。保護者との面接もそうでありたい。
 楽しくユーモアのあるもの。しんみりとしたもの。感動をよぶもの。
 それらは日々の実践の中に無数にある。
 授業や休み時間などのほんのひとときに見せる子どもの笑顔。連絡帳に書かれた保護者の声。そこにある。問題は、教師にそれが見えるかである。
 面接で如何に楽しい話をしても、方法を工夫してみても「親」は見抜くものである。担任が子どもと保護者を如何に捉えているかを。それなくしては担任と保護者の本物のコミュニケーションは生まれない。

 「授業のネタ 教材開発」1999 5月号