「やまがた教育実践研究」第4号 山形大学教育実践研究会2004年1月

     コミュニケーション力を高めるために
   ─── 互いに支え合うことのできる不完全さの共有、補える互いの存在の確認────                                                 東根市立東郷小学校  沼澤 清一


 話すことを通してコミュニケーション力を高めるには、
   話す方法(話し方)をしっかり指導すること

よりも、

 話し合わせる場をしっかり設定すること  
の方が有効である。                                                                              
 また、【高度なワンウエイ】よりも、【不完全なツーウエイ 】の方が有効である。                


 以下に朝の会などで当番がスピーチを行う「当番の話」で具体的に述べていく。
 当番の話………………その日の当番(日直)が話をして、司会をしながらみんなからの質問を受ける。
 これを、次の点にこだわって行うと大きな違いが生まれてくる。
 発表する子の発表内容よりも、発表する子と発表を聞く子のつながりに重点をおく。
 ここで身に付けさせたいのは、上手な発表の仕方、上手な聞き方ではなく、互いに支え合うことのできる不完全さの共有であり、補える互いの存在の確認である。問うことによって生まれる友達とのつながりである。
 コミュニケーションは、聞く側の存在をいかに意識させるかが重要となる。そのためには、問い合うことの楽しさを実感させることが一番である。自由な雰囲気の中で、
          話す→聞く  そして、   尋ねる→答える
ことができるような場をつくり、その楽しさを味わわせるのである。
 そもそも、「聞く行為」は相手の話の全面受け入れで終わるものではなく、聞いた後に自分の考えをもとにして「新しい考え・問い」を生む行為でなければならない。
 友達や教師に尋ね、そして、答えてもらう。その繰り返しの中でこそ「聞く力」は育っていく。そこから、友達とのつながりが生まれ、コミュニケーション力が高まるのである。
 これまで、伝え合う力を高めると言うと、発信者の表現力をいかに高めるかというところに焦点が当てられてきた傾向が強い。受け手の意識化は軽視されがちであった。聞くという行為自体が具体的に目に見えないものであるからである。そこでは、友達の話をよく聞けたかと尋ねるのではなく、友達の話に質問できたかと尋ねる方がより具体的であり子どもの活動を導きやすい。聞くという行為を意識化させやすい。
 また、発信する側の子どもの表現力は、受け手の共感的な態度、学び合おうとする姿勢によって大きく左右されることにも目を向けなければならない。聞き合う力を高めていくことは、結局、発表者の表現力をも高めることになるのである。


「くりひろい」10月1日       4年生・H14実践   Nくんの当番の話から                


│ 9月24日にうちのお父さんが、どこかの山でくりひろいをしていた。│
│そして、家に持ってきて、焼きました。くりから虫が出てきました。    │
│ 質問はありませんか。             (Nくん)                             │
N 「Yくん。」
Y 「その虫は多分、くりしきぞう虫だと思います。」
N 「Mちゃん。」
M 「くりはどのくらい持ってきましたか。」
N 「分かりません。Aちゃん。」
A 「うちではもうくりを食べたんだけど、Nくんちではくりを食べましたか。」
N 「食べました。Lちゃん。」
L 「私は、今ベランダで植えているどんぐりは、3年生のゆみちゃんちの近くでひろったので、どんぐりがいっぱい落ちているので、ときどきそこからひろってきて、くりは、地区の和合とかのお祭りのときに午後からEちゃんとかいっしょにいたら、いがぐりがあったので、いがぐりの中からとって持ってきました。」
N 「Aちゃん。」
A 「おみこしのとき、石の坂方面の方に行ったら、くりが落ちていて、そしたら、山の下の方にかもしかがいました。」
N 「Kくん。」
K 「どこの公園だか分からないんだけど、くりににた、くりみたいなものを見つけて、それをひろってばあちゃんに見せたら、トチの実だと言っていました。」
N 「Oくん。」
O 「前、みんなで山形市自然の家に行ったとき、いがぐりを見つけたから、ふんで割ってみたら、ちっちゃいくりが3つくらい出てきました。」
N 「はい、Mちゃん。」
M 「くりは、おいしかったですか。」
N 「おいしかったです。Lちゃん。」
L 「私が、ちょっとだけ開いているのを開いて取ろうとしたら、たぶん2個入っていたと思います」
N 「Aちゃん。」
A 「くりが入っていると思って割ったら、くりが入っていなくて、おばあちゃんは、サルが食べたからだと言っていました。」
N 「Sちゃん。」                             
S 「みんなに聞きますが、くりには花が咲くと思いますか。」
(花?)     (咲くと思う。)
(咲かないな。)       (見たことないなあ。)
(見たことがないからなあ。)
N 「Kくん。」
K 「くりの花は咲くと思います。毎日、学校に来るときくりの木があって、細長い花みたいな、くりの花がありました。」
N 「Mちゃん。」
M 「いがぐりみたいなところが花だと思います。」
N 「Rくん。」                               
R 「みんなに聞きますが、もしも、くりの花が咲くなら、おしべ・めし べと、お花・め花のどっちだと思いますか。」
(う~ん、どっちかな)
(おしべ・めしべ)
Y (おすの木・めすの木もあるよ。)
「私は、おしべ・めしべだと思います。」
N 「先生。」
 『Kくん、くりの花は何色だった?』
K 「たぶん………白っぽいような、よく分からない………くされているやつが落ちてきたから。かれたやつが落ちてきたから。」
 『はぁー』
K 「たぶん白い……。」
 『ひまわりみたいの? 』
K 「細長いの、こう」
 『細長いのね。……こんな花?<板書>』
 (見たことない。)
R (図鑑で調べてみる。)
K 「ソーセージみたいなやつ。」
 『あああ。ソーセージみたいなのね<板書>』
K 「そういうの、それよりもっと細いくらい。」
 (へえぇ。)
 『きゅうりみたいなのだな。』
N 「質問はありませんか」
 国語辞典や、教室にある図鑑からくりの花をさがそうと動き出す・・・・

N 「Hちゃん。」
H 「くり、ぶなの仲間の木。実は食用。みきはかたくて水に強く、線路のまくら木などにする。」
 『線路のまくら木は、くりの木か。』
 Rくんがくりの花の載った図鑑を見つけて前に持ってきた。
R (はい、花。)
 『Rくんが本を見つけてきたから、見せて、くりの花。Rくんから見せてもらって、くりの花。』
K (やっぱり、これだあ。)
R 「お花・め花です。」
K (やっぱり、こんなのだ。白じゃなかったな。)
     ガヤガヤガヤ
 『くりの花は、どっち、おしべ・めしべ?』
R (お花・め花)
Y (落葉樹って書いてあった。)
 『くりの木は、線路のまくら木か。』
 (ソーセージっぽいよね。)
 『まくら木<板書>………かたいからね。』
     ガヤガヤガヤ
N 「Oくん。」
O 「くり、ぶなの仲間の木。実は、いがにつつまれており、おいしい。夏のはじめ、うすい黄色い小さい花が咲く。木はかたいので、線路のまくら木に使う。」
N 「Kくん。」
K 「くりは、ぼくのは短くしか書いていないんだけど、野山にはえる落葉樹。実は、食用でいがにつつまれている。」
N 「Wくん。」
W 「くり、秋に実がなる高木。実は、いがにつつまれていて食べられる。木はかたくて水に強いので、線路のまくら木などに使われている。」
N 「ほかに質問はありませんか。みんないっぱい手をあげてよかったです。これで、ぼくの話を終わります。」
 『今日の話、おもしろかったなあ。くりの花は、おすの花とめすの花ね。Rくんが見つけてくれた長いのは、おす? めす?』
R 「分からない…………。」
  Rくんは、また、図鑑を見始めた。すると、数名が図鑑を囲んだ。
 『お花・め花、どっち? 黄色で長いのだね。』
K (色ちがったけど、形は同じ)
R (お花だ、たぶん。)
 『お花? め花の方にやがてくりがつくのね。1つの木に男の花と女の花があるのはヘチマと同じだな。』
A (先生、きゅうりもお花とめ花だったよ。)
 『お花とめ花か。』
   前に2回、花と実のカードを宿題にした。そのとき、きゅうりはどちらかだれも分からなかった。Aさんは、その答えを言っている。
 『くりがなると分かるけど…………お花ですか?』
 (お花)
 『はい、お花ね。』
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 この子どもたちは、私が3年生で担任したときから毎朝当番の話を続けた。2人の当番で長いときは30分間以上かかる日もあった。しかし、この日のように学習内容が話題になることが多く、教科の進度に影響はなかった。むしろ自由な話し合いから生まれる問いは学習を深めることになった。
 この日の当番Nくんは、2年生まで特殊学級に在籍していた、人前で話をすることを嫌う子なのであるが、「当番の話」という雰囲気の中、話を進めることができた。