連続特集】補充学習に挑む(第6回)
「出口でも定着を図る」テスト時間の基礎・基本         

 

 補充的学習は、基礎的・基本的な内容の確実な定着を図るために行う指導である。
 その定着度を評価する方法の一つとしてテストがある。テスト(この場合、ペーパーテストを指す)問題の内容については、様々な工夫が凝らされている昨今。しかし、テスト時間の活用については、なかなか語られることは少ない。
 どのように力がついていても、それを表現する場において力が発揮されなければ成果となって表れない。評価されない。つまり、子どもの努力が報われない。
 テストの時間に子どもの力を発揮させ学習力を鍛えることは、補充学習の土台となる。本稿はこの視点で述べていく。
 テストの時間は、
┌─────────────────────────────────────────┐
│ 問題を解き続けることができ、自分の力を自覚することができる。      │
└─────────────────────────────────────────┘
 そういう時間であってほしい。それまでの学習の定着度を教師が評価するというためだけではなく、子どもが学び続ける姿勢・集中力を身に付ける時間にもなっていなければならない。

 

 テストする教師側の基礎・基本
 テストを配る時点で、子どもたちの力を把握しておかなければならない。早めに終わってあくびを始めるのは誰か。この問題につまずくのは誰か。集中力が続かなくなるのは誰か。
┌────────────────────────────────────────┐
│ 机間巡視をして、子どもの動きを見続け、個に応じて対応する。       │
└────────────────────────────────────────┘
 テスト用紙を配り、この時とばかりに教卓で仕事を始めてはいけない。テストの時間は、子どもの反応に対応して個々に指導を行える貴重な時間なのである。
 教師が対応を閉ざしてしまっては、分からない子はずーっと分からないままであり、書き終わった子は見直しなどするはずもない。当たりはずれだけに関心が向き、やがて学習がクイズ化されてしまう。

 

 テスト時間における無駄
 第1は、書き終わってしまった子のあくびの時間。第2は、分からない子の考えられない時間。
 どちらも、思考がストップした状態である。これらを、その子その子によって生きた時間に変えていかなければならない。

 

 ①書き終わった子への対応
 書き終わった子には、問題の見直しをさせたい。ところが、教師が教卓から「見直しをしましょう」と何度呼びかけても、多くの場合、子どもは見直しをしたふりをするだけである。見直しとは、子どもにとって難しい作業なのである。
 教師が、机間巡視をしながら間違いを指摘していくと良い。
「この問題、惜しいよ。」
「右半分で2問間違っているよ。」
「惜しい、3問間違っているよ。」
 最初は具体的に、次は範囲を区切って、最後は全体で。これを4月から個に応じて段階を踏んで行っていく。すると、うっかりミスや読み間違いが少なくなり得点がアップするばかりではなく、集中力の持続が驚くほど伸びる。
 間違いを指摘された子が、それを訂正できたときには、テスト中であっても大げさにほめる。その行為をほめるのである。それを肌で感じた子どもたちは、集中して見直しを行うようになる。すると、また、誰かがミスに気付く。それをほめる。
 教室の空気がかわる。
 子どもにとってテスト時間が、ほめられる時間へと変わっていく。正解への賞賛ではなく、正解に向かって行った自分の努力への賞賛である。
「今、2問間違いを見つけたよ。」
「見直ししたら分かったよ。」
 こういう言葉が、子どもたちの中から自然に出てくるようになると、市販のワークテストは平均90を優に超えるようになっている。             

 

 ②分からない子への対応
 どうしても分からない子には、その場で個別指導を行えばいい。それでは、テストの点数に客観性がなくなるというのであれば、そうした個別指導によって得られた点数とは別に、教師の中でしっかりと数値化して評価すればいいのである。分からないまま長い時間苦痛に耐えて座り続けるよりも、解き方を思い出し一問一問確実に解ける実感を会得できる方がいいに決まっている。
 こうした個別指導を行われることがその子の自尊心を傷つけ、逆に意欲を低下させる場合もある。注意が必要である。しかし、必ずしも個の問題とは限らない。こうした個別指導を受ける子を見下げる集団に問題があることが多い。分からなさを善悪でとらえることなく、共感的に受け入れられる集団こそ、学力を高め合う集団である。学級経営が学習面に与える影響の大きさは、こういうところに必ず表れてくる。

 

 テスト後
「分かる・できた」それがすぐ点数になって表れるのがテストである。
「あっここをもっと見ておけば良かった。」
「見直しをして良かった。」
 その実感は、早ければ早いほど大きい。採点後は、一秒でも早く子どもの手にテストを返したい。
「ここの間違いに気付いたのはすごいね。」できればその日のうちに一言温かいコメントを加えながらテストを渡したい。
                  *
 テストによる子どもの評価は、テスト時間終了時のものだけではいけない。テスト中の個々の子どもの動きと対話し、その変化に対応した「個の捉え直し」による評価が必要である。
(おっ、今日は自分から見直しをしたな。)
(この前解けなかった問題が解けたぞ。)
(加減の間違いに気づけるかな。)
(この集中力をほめなければ。)
 教師は、テスト時間中に何度も机間巡視を行い、子どもの動きを探らなければならない。

 「心を育てる学級経営」(明治図書)2003 9月号