算数・数学科授業で「考えさせる」追い込み方
 「手続きの習得」から「手続きの選択」へ

 大草原のような移動が自由な場所にいては、追い込まれることはない。逃げられない場所でこそ、追い込まれるのである。
 子どもには、どういうときに追い込まれるのであろうか…………………。
 子どもが追い込まれるときとは、
┌───────────────────────────────────┐
│この問題の解き方は学習しているから解けるはず、分かるはずという意識  │
└───────────────────────────────────┘
を持っているときではないだろうか。
 解けるはずなのに解けない。そういう場所に追い込まれた時に、それまでの学習の内容を振り返り、フル活用し、その意義を改めてメタ認知的に整理し、理解し直すことになるのである。
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 2年生で次のような学習を行う。

 ①~④まで、教科書にはそれぞれ一ページに詳しく説明が書かれ、練習問題も書かれている。
 ①、②、③、④のそれぞれの解き方(手続き)が分かった子どもたちを、「追い込む」とは、①~④までの問題が混ざった問題を与えることである。
 子どもたちは、問題を解く手続きをなぞるのではなく、問題を解く手続きの選択をするときに、「考える」ことになるのである。
  ①から順に④まで学習した後、①の形の問題を与えると、必死に繰り上がりをさがそうとする子は、本当の意味で①と④の問題の「解き方」の意味が理解されていない。手続き上の流れを覚えてそれに従って答えを導き出していたにすぎない。それを自覚させるためにも、この種の追い込みは必要不可欠である。
  同様に、引き算にも同じことが言える。

 それぞれの解き方を手続き上で覚えた子は、⑤~⑨の混ざった問題を与えられると目眩がしてしまう。
 引けないときは、位が上の位から10くり下げるというたった一つのルールで解き方を捉え直させなければならない。
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  2年生では、さらに次の問題を提示した。

 解き方の意味が理解できていれば、位が増えても解けるということを実感させるためである。
 繰り上がりの意味を理解させるには、教科書で扱っている①~④が基礎で、①~④が発展学習と考えてしまいがちなところに大きな落とし穴がある。①~④が理解できるように①~④を教える(くり上がりの意味を教える)という方が、実ははるかに難しいと考えるべきである。    注:①~④は上の式 
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  さらに言えば、

 ⑤~⑨を理解できた子(くり下がりの意味を理解できた子)は、それらが混ざった問題を解くことができる他に、⑤~⑨が解けるはずなのである。
  私のような未熟な教師は、⑤~⑨を解かせて初めて⑤~⑨のくり下がりの意味を理解させることができる。
 1を教えて10を学ばせることができない者は、10を解かせて1を教えることが必要となる。
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 ⑤~⑨、この手の問題を子どもに預け、その反応を見るのも楽しい。
「解けた!」という感動は、算数の美意識(学んだ解き方のさらに高度な場面での活用=広がり、繰り下がりという概念での単純化=まとめ と沼澤は算数の美意識を考えている)を生む。
 さらには、                            注:⑤~⑨は上の式

のような問題も提示することができる。
 新しい形の問題を目にしたとき、目を輝かせて取り組む子どもたちは、様々な形での追い込みを自力で、または、学級集団で乗り越えてきた経験のある子たちである。
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 今回、本原稿を書くにあたって、「追い込む」という言葉の意味・意義を再確認することができた。大きな収穫であった。

                                 注:⑩~⑪は上の式 

 ※本論は、これまで勤務してきた山形県公立小学校での実践をもとにしたものです。

                                  (現立命館小学校教諭)

  授業研究21(明治図書)2006 7月号