情報リテラシーを高める授業に挑む  社会科の授業をこう変える

 水の流れを追って

 四年生の社会科の学習に次の2つがある。
A.「水はどこから」(水道の学習)
B.「山ろくに広がる用水」(地域の学習)
 年間計画では、一学期と二学期の学習内容に分かれる。これを、『水の流れを追って』と関連づけて学習する場を設定した。
 2つの学習を大きなテーマで関連づけて比較することによって分析力を身に付けさせることをねらいとした。


 水はどこから
 家庭での調べ学習、教科書や副読本を使っての調べ学習を行い、浄水場に見学に行ってまとめる。本単元の場合、よくある流れである。
 私は、この浄水場の見学を二学期、地域の学習「寺内の用水路」の間に行った。


 寺内の用水路
 子どもたちを導専坂橋の上に立たせて、どうして田んぼにすぐ下を通る野尻川の水を使わないのかと尋ねた。「川の水は低いから田にあげるのが大変だ。」ということになった。大柳橋の上でも同じように子どもたちに尋ねた。答えは同じだった。
 その後、橋の周り、近くの田のあぜ道をみんなで歩いた。「導専坂橋よりも、大柳橋の方が低いよ。」「川にも高いところと低いところがあるよ」ということに気がついた。また、橋の脇にある水管橋の存在にも気づいた。「水の音がするよ」と言う子がいた。その水管橋の水がどこから流れて
くるのかを見学することになった。

 取水口からの水の流れ
 土地改良区の方にお願いして、バスを使って新鶴子ダム、徳良湖、そして、鶴巻田頭首工の見学を行った。バスでは、取水口から西原までの用水路を可能な限りその上を通ってもらった。地上に現れて見ることが可能な水管橋、分水工をバスを降りて見学し、詳しい説明もお聞きした。子どもたちは、遠い鶴巻田頭首工の取水口からの水が長い旅をして大柳橋の水管橋まで届き西原の田んぼまで送られてくることを知り驚いた。
 土地改良区の方にお願いして手に入れた図面を拡大コピーして色を染めて教室にはった。(→)こういう図面があることに驚かされた。専門家の方に聞いてみるものだとつくづく思った。

 再度、水はどこから
 用水路の学習の間に、浄水場、配水池、ポンプ場の見学を行った。バスの運転手の方、環境衛生事業組合の方に無理を言って山の頂にある配水池まで連れて行ってもらった。「ここまで来た学校は初めてです。」とほめられた。環境衛生事業組合に何度も電話をし足を運んで質問攻めにしたことが専門家の教える喜びに触れ大きな協力を得られることになったようだ。
 忙しい仕事の合間をみて住宅地図をつなげて水道管の通る道を詳しく書いても下さった。その水道管の上をバスで通って、浄水場→配水池→ポンプ場→配水池→学校 と順を追っていった。
 大柳橋で、橋の脇にある管、水管橋を見つけた。用水の見学時とは反対の方にあった。つまり、大柳橋には、2つの水管橋があった。驚くことにその2つの水管橋の水の流れは、逆になっていた。 

  寺内の用水路
 この後、昔はどうやって水を田にあげていたかの追究を始めた。西山堤に行き地域に住む菅野さんのお話をお聞きした。菅野さんの曾祖父は西山堤を作り上げ、西原頭首工のもとを築かれた。教室にきて頂き、代々の歴史もお聞きした。たくさんの質問もした。
 新しくなった西原頭首口の見学、自然のわき水の見学も行った。
 川の高い所から水を取って、田に流す高低を利用した水の取り入れは、模型を作ってビー玉やビービーダンの玉を転がして確認もした。

 

 水の流れを追って
 昔も今も、していることに変わりはない。 

  水道………水をきれいにして飲み水として、各家庭に送る。

    =高いところに水を送り、落差を利用して流す。
 農業用水………田んぼに水を送る。

    =高いところから水をとって落差を利用して田に送る。
 上水も農業用水も土地の高低をうまく利用して水の流れを作っている。
 そのことに気づくと子どもたちの地域を見る目がかわってきた。大きな視点で地域を見ることができるようになってきた。
 それぞれの情報を通して、それぞれが分かるというのだけではなく、新たなことが分かる。相違点と共通点に気づくことで、それぞれの情報を振り返りより正確に受け止め視野を広げることになる。それが、情報リテラシーを高めることになる。
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 鶴巻田頭首口の取水口近くに立ったとき、その高さ154メートルと言われても実感はなかった。比べるところがなかったからである。
 大柳橋は、116メートル
 西原の田は、123メートル
 水は、高い所から流れると、下がってからも勢いで上に上がる。用水は、その仕組みで成り立っている。
 浄水場からの水は、盃山配水池まであげられる。盃山の配水池の脇に立って、市内を見下ろしたときその高さが実感できた。
 驚いたことに、盃山の配水池の高さは、158メートル。鶴巻田頭首工と4メートルしか違わないのである。
 ほぼ同じ高さの所から用水と上水が寺内学区に送られてくる。
 大柳橋では、
 用水は、低から高へ
【高低差を利用して川を越して押し上がる】
 上水は、高から低へ
【南沢配水池にあげてからおとすため】
 何とも不思議なものである。
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 専門家の驚き
 用水に詳しい土地改良区の方は、上水の盃山の配水池の高さを伝えると驚かれていた。逆に、環境衛生事業組合の方は、頭首工の高さに驚かれた。
 知らずに調べた者だけがその共通点に気づき、両者に教えることとなった。
 何とも不思議なものである。

 授業研究21(明治図書)2006 4月号