「発表」の仕方が上手になる裏ワザ 低学年  

    朝の会の時間を使って         

 

 15分間の朝の会で健康観察を行っている。名前を呼ばれた後、「元気です。」「お腹が痛いです。」の他に、自由に発表をしてもいいことにしている。
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【10月14日、朝の会】  <1年生>
N女「今日学校へ来ると中、いいにおいがするなあと思ってたら、オレンジの花のにおいで、いいにおいでした。」
『どういう花?』
N女「ちっちゃい花。」
『ちっちゃくて丸いんでしょう。』
K男(金木せい)
R男(土星、金星、木星)
『せいって、星じゃないよ。いいにおいがするね。』
Y女(公園にさいている。)
(いいにおい。)
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O女「昨日、魚はぜんぶエラ呼吸なのか調べたら、びっくりしたことがありました。」
『何?』
O女「ほとんどの魚はエラ呼吸なんだけど、ウナギとか、何かへんな名前で思い出せないけど、外の空気をすうことができる魚がいる。クジラは、魚じゃない。」
R男(哺乳類やでえ。)
O女「魚の中にはクジラみたいに外の空気を吸える魚がいる。」
『肺があるってことかな?』
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 N女は、その日の朝の気づきを、O女は生活科の授業の続きを発表した。14日の日記には7人の子が金木犀を調べてきた。

 金もくせいについて
 金もくせいは、モクセイ科です。
①花のくきや木の高さ→約4メートル
②花がさく時期→9月
③花の色 → だいだい
④とくちょう →花に強いかおりがある。
 おかぶとめかぶがあるが、日本にあるものは、おかぶといわれ実がならない。
 春にさくバラやジンチョウゲ、夏にさくクチナシ、秋にさくキンモクセイなどは、すぐにわかるかおりをただよわせます。これらの花ほどではなくても、植物は花、葉、くきからどくとくなかおりを放ちます。かおりを出すのも、美しい色と同じように、虫を引きつけるためです。
 感想 朝のけんこうかんさつで言ったら、みんな知っていたのでびっくりしました。今度は、おしべとめしべじゃなくて、おかぶとめかぶなので、ややこしいです。花がいいにおいなのは、人間のためじゃなく、虫をよせつけるためだったので、ちょっとがっかりです。     (14日・N女)
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【15日、朝の会】
 教室に金木犀の花が届けられた。金木犀のすてきな香りにつつまれながら朝の会が始まった。
T男「今日の朝、目が半分あいてなくて、何かいいにおいがするなあって、においをかぎながら外まで出てみたら、金木犀が用意されていたから、もってきました。」
『おかあさんが準備してくれたの?』
T男「昨日、外の近くに金木犀が咲いているって言って、あるから、みんなに見せてあげようと思って。」
『あまいにおいがするでしょう。』
(うん。)
(食べたいなあ。)
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N女「昨日、金木犀を調べたら、金木犀は、実がならないと書いてあったのでびっくりしました。」
『実がならない?』
N女「書いてあった。」
『実がならなかったら、花から実がならないの?』
M男(そうなら、どうやってタネを植えるの?)
X男(おそらく花の中に入っているんじゃない?)
R女(ヒマワリみたいに入っているんじゃないの?)
『花の中に? でも、タネがならないんでしょう?』
K男(小さいつぶみたいの?)
N女「わからない。」
『実がならないってことは、タネがならないってことでしょう。……金木犀は、何を植える?』
※タネと実の違いについては、やがて大根の栽培と並行して生活科の授業で話し合うことになった。
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【16日、生活科】
<10分間、金木犀の発表の時間>
  …………<略>…………………
U女「金木犀には、めかぶとおかぶがあって、おかぶは、日本に入ってきているけど、めかぶは、まだ中国にある。」
『これは、どこからきたの?』
U女「中国。」
『おかぶが、中国からきたのね。めかぶは、きていないの?』
U女「まだ。」
『中国からまだきていないの? おかぶしかないの。』
T男(これ、おかぶってこと?)
U女「たぶん、おかぶ。」
『じゃあ、めかぶはないのね。』
U女「めかぶよりおかぶのほうが花がきれいだから。」
  …………<略>…………………
『日本には、おすのかぶしかないんだから、この花は、何の花? お花?め花?」
(お花)
『めかぶのほうにある花は?』
(め花)
『2つがいっしょになってタネができるんだったね。これで、こまったことはないですか?』
A男「おかぶとめかぶがないと、タネができないのに、何でさいているのかな?」
R男(ここまで、とどくんかな?)
R女(もしかしたら、中国からタネをもらっている。)
Z女「おかぶしかないのに、なんで。」
  …………<略>…………………
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【16日の日記から】 
 きんもくせいのかんじは「金木犀」でした。このせいは、きんもくせいのせいとかしかつかいません。
 あきにあまいかおりの花をさかせる。モクセイのなかまのじょうりょくじゅ。たかさ3~6m。げんさんちは中国。めかぶとおかぶがあるが、日本にはおかぶしかないので、みはできないといわれています。花は、ふつううすだいだいだが、まれに白い花をつけるものもある。
「じょうりょくじゅ」をしらべます。じょうりょくじゅは、一ねんじゅうみどりのはをつけている木。はんたいは、らくようじゅといいます。
 金もくせいは、たねがなくてもさしきでふやせます。「さしき」しょくぶつの中には、きりとったくきやはっぱをしめった土にさしておくだけで、やがてねをだしてそだつものがあります。こうしてふやすほうほうをさし木と言います。  (16日I女)
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 きょう、P女ちゃんとT男くんがきんもくせいをもってきたので、きょうは、きんもくせいのことをかきます。じしょにはのっていなかったから、ずかんをみたらこうかいていました。キンモクセイ、おばなとめばながありますが、にっぽんにはおかぶしかないといわれています。はなは、よいかおりがします。おかあさんが、きんもくせいのことをしらべてくれました。はながうつくしく、かおりがいいので、にわやこうえんなどにうえられます。しゆういしゅで、にっぽんには、おかぶのみがはいっています。ひんしゅによって、はないろがちがい、はなのしろいものがギンモクセイ、たんおうしょくのはなは、ウスギモクセイ。いずれも、くうきがきたないところでは、はなをつけません。
 しゆういしゅ  おかぶとめかぶがべつべつのしょくぶつ。……………<略>     (16日O女)
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【17日、朝の会】
I女「きのうの先生のしつもんは、さし木っていうもので、木を切って水につけて、土に入れて何日かしたら、ねっこが生えてそだつってかいてありました。」
『何の話?』
I女「金木犀は、タネじゃなくて、さし木をする。」
『さし木って? さす木って書くの? これ【教室の窓辺でペットボトルの水栽培を行っている「ポトス」を指して】でふやすのね。このまま生きるのかな?』
I女「水につけて、土の中に入れたら、何日かしてねっこがついてくる。」
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 ここ数日の朝の会は、金木犀と並行して、サツマイモのタネ、また、「電気ウナギ→電気→雷→避雷針」と広がる話題もあった。
 この後、金木犀のにおいは虫を避けるためのものであること、そして、ホンヒラタアブだけが金木犀のにおいを好み受粉を手伝うこと、それに対してアサガオは毒性の種類でにおいがなくても虫に食べられないこと、自家受粉であること等個々の追究を関連づけて一時間金木犀の授業を行った。

 

 朝の会の位置づけ
  10年前まで、私は、オープンエンドの授業の後、授業と授業の間を生かすのは日記帳と位置づけてきた。その後、朝の会で自由に話をさせるようにしたところ、子どもたちの思考が継続され、日々の追究の幅が一段と広がるようになった。この時間が重要な位置を占めるようになってきた。
 子ども同士の意見のつながりが生まれるのは、完全な発表よりも、寧ろ不完全な発表の方。そこでは「問い」が生まれ、それについて考え合う空間が生まれるということを子どもたちから教えられた。
 発表者に質問しながら互いの分からなさを共有する「不完全さの共有」。
 私は、これができるのが「学級」での学び、「集団での思考」であると考えている。
 朝の会で自由に話す時間をとることは、子どもたちの思考の継続を図り追究を広げ、深めることになる。そして、結果として授業での発表力も向上することになる。
 それは分かっていても、教師が子どもの発表・追究を「つなげる」という視点に立って待つことは難しい。ついつい教えてしまいたくなる。自戒の日々である。

 

  「授業力&学級統率力」(明治図書)2010 8月号