子どもの思考に変化が起こる必須体験とは
 子どもの授業観を変える

「えええ?」
「京都の方がケニアより暑いの」
「赤道が通っているのに?」
 それまでの知識で説明できなくなるとき、考え方に変化を迫られる。思考に変化が生まれる。       

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 分かることは、覚えること
 教えられたことは、そのまま繰り返し暗唱して記憶すること
 漢字学習や計算ドリルの反復学習を得意とする子は、そうした学習観をもちやすい。
「何を覚えたらいいのですか?」
「答えは、何ですか?」
 事実や内容を自分の記憶の中に取り入れたときに「分かった」ということになるらしい。
 そうした学習観では、思考に変化が起こることは少ない。
 覚えた内容がパーツとして増えるだけで、新たな学習に転移できる学びとはなっていない。
 思考に変化が起こるとは、「はてな?」から事実や内容をとらえ直すこと、つまり、一つのものを別の方向からとらえ直すこと、違うと思っていた二つのものにつながりを見出すことなど様々な方法で自分の考え方を修正していくことである。
  そのための必須体験を学び方のシステムとして考えてみる。
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│①学習は継続する。    │
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  一時間一時間の授業は、細切れでそれぞれ完結するのではなく、大きなテーマで継続していく。
  授業形態は、次のようになる。
┌───────────────────────────────────┐
│②一時間の授業は閉ざされず、問いによって開かれる。       │
└───────────────────────────────────┘
 授業は、「分かった」で終わるのではなく、「はてな?」の発見で学びのスタートとなる。
┌─────────────────┐
│③自学が授業で生かされる   │
└─────────────────┘
 昨日調べてきたことの発表から授業が始まる(連続性)。
 1ヶ月以上も前に書いていたことが、「今」の授業の中に位置づけられる(価値付け)。
 前者は子どもが、後者は教師が。
 学びの主体が子どもとなる。教師はコーディネーターの役割が大きくなる。
 先生が準備したものを授業の中で効率よく学び取るという姿勢が身についた子には、学習観の転換が迫られる。
┌──────────────────────────────────────────────┐
│④学び合いの中から新しい気づき・疑問が生まれ、みんなの学習は継続する。│
└──────────────────────────────────────────────┘
 ③が子どもと教師の関わりであれば、④は子ども同士の関わり合いとなる。より主体性が高まり、学ぶ姿勢に変化が生まれる。
 これらのことが機能して、子どもの授業観が変わり、クラスが学ぶ集団となることを必須体験と考える。
 子どもは柔軟である。どのような様式の授業形態も受け入れる。しかし、そんな中、子どもたちは自分なりの授業観を育み続けているのである。
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 本校では毎年ワールドウィークと称して留学生を迎えて全校あげての取り組みを行っている。3年S組の私のクラスはケニアからの留学生ダマ先生と一週間過ごした。
 冒頭の子どもの言葉は、初日のダマ先生との場面である。
【初日の日記から】
 わたしは、ケニア山は赤道の近くにあって、とても暑いと思います。調べたら一年間の平きん気温が10~28度でさわやかな気こうです。だいたい19度でかんそうした気こうだそうです。昼と夜の気温のさがはげしく、夜はすずしい。ケニアの国は、暑いというイメージだったけど、じっさいは日本の方が暑くてびっくりしました。そういえば、前科学センターへ行った時、日本の夏と外国のさばくの温度のちがうへやに入ったとき、さばくの方がとてもすずしかったです。日本は、むしむししてしつ度が高かったです。

 

 翌日、ダマ先生に多くの質問をした。その後、盆地である京都の高い湿度から感じる暑さ、赤道直下でありながら標高1600mの高原地帯であるケニアの地形からくる気温の低さを調べ出した。
 ダマ先生と別れて3日目、「今日のケニアの湿度は85%。今日は雨がふっていたからだと思います。」日記の中に数行の言葉が。
 答えは自分で探す。ゆっくり、しかし、確実に自分達発の「はてな?」を解明していく。子どもたちの授業観が築かれていくのである。 (立命館小学校教諭・立命館大学産業社会学部非常勤講師)


  「社会科教育」(明治図書)2010 11月号