授業を「未知-既知-未知」で終わらせる技術

 1.授業を開いて終える「授業のオープンエンド化」
 有田和正氏は、これまでの授業を次のように述べている。      
(これまでの授業は)「未知(わからない)を、既知(わかる)に変えるもの」であった。つまり、「教え・わからせ・理解させる」授業であった。一時間の終わりには、問題が解決し、「なあんだ! こんなことだったのか」と安定した状態で終わるものであった。     
 これは、クローズドエンドで、閉じられた終わり方で、子どもが自らの力で調べることなどを期待するものではなかった。
 しかし、これでは、今日の授業から明日の授業へ続かない。間が生きない。子どもたちの希望もない。         【有田和正著作集(明治図書)p3】
 有田氏は新しい授業を上図のように表している。      【同書 p3】
 つまり、授業が終わってから追究する子を育てるには、授業形態そのものをクローズドエンドからオープンエンドに変えるべきだと言うのである。
 さらに有田氏は、授業とは、
 子どもたちが「既知(わかっている・理解している)」と思っていることが、実は、表面的なことで、本質的には何もわかっていない(未知)のだ、ということに気づかせることにならなければならない。
 教え・わからせ・理解させるのではなく、わかっていると思うことをネタでゆさぶりをかけ、子どもたちに「あれ!」「わからないや」といわせるようにするのである。
 わかるかわりに、疑問を持たせたり、問題を引き出したり、追究しようという意欲を引き出したりする授業を志向するのである。子どもたちに「あれ!」といわせ、「調べてみたい→どこで、どのように調べたらよいのだろうか」と考えるように指導する授業である。              【同書 p4】
 このような授業形態には次のような利点がある。
①授業と授業の間が生きる。そして、授業に連続性がでる。
②学習の生活化が行われる。
 授業と授業の間を生かす、つまりは家庭で子どもたちが調べ学習などで追究するようになる。学習が教室の中だけで終わらず、生活全体での発見・追究を通して行われる。授業の話題が日常の会話の中に自然に出てくるようになり、時には家族での追究にもつながる。

 

2.実践から[5年生理科、植物の成長の導入]
 教科書では、トウモロコシとインゲン豆のたねを使った観察・実験が中心となっている。市販の実験セットを与えれば、子どもたちは喜んで取り組む。しかし、そこで終わってしまう。子どもの頭の中をトウモロコシとインゲン豆というたねは、あっという間に通り過ぎていく。
 たねとは実に不思議なものである。この単元は、その不思議な世界を味わうことのできる貴重な機会なのである。
 授業の始めに子どもたちに問う。
【たねを食べたことのある人?】
 ほとんど子どもたちの手は上がらない。子どもたちにとっては、花壇や畑に植えるものがたねなのである。
 料理をしたものでもいいことなどを話すと、トウモロコシ、ひまわり、米、麦、大豆………たくさんの名前が出てくる。
【たねのもとの形をこわして食べているものもあります。何でしょう?】
 トウモロコシから作られているポップコーン、とんがりコーンなどスナック菓子につながると子どもたちは強い。米から作られるもちやせんべい。麦から作られる小麦粉に気づくと、パン、うどん、お好み焼き、クッキー、たいやきなどたくさん出てくる。                                       

【もっと他にたねを食べていませんか?】                    
 たねを身近に感じて植物をとらえはじめると、いろんな発表が出てくる。
「大根は?」  「ごぼうは?」 「にんじんは?」
「たねなんかないよ!」  「それじゃあ、何を植えるの?」
「ピーマンみたいに中にたねがはいっているのかもしれない。」
「あれはたねなのか。」  「そうか。そうだよ。」   
【大根のたねを見たことがある人?】
「はい!」元気に手が上がる。カイワレ大根を家で植えている子が主張する。
「大根のどこにたねがなるの?」
「先生、知っているの?」
『ないと思うよ。食べたことないから………。』
「ええ?」  「うん、でも………。」
 奇妙な結末をむかえ授業が終わる。子どもたちは、最後に教師が正しい答えを教えてくれるものだと思っている。上位の子ほどその傾向が強い。たねは、花のあとに実がついてできる。では、大根の花はどこに咲くのか。チューリップの花のあとにたねはできるか? ジャガイモは? 授業後の追究が始まり、調べる楽しさに気づいた子どもたちは、「学ぶ楽しさ」にも気づいていくことになる。
 本実践の続きは、「5年生を追究する子に育てる」沼澤清一著(明治図書)をご覧ください。
 

 教職研修スタートブック・シリーズ(全4巻)第2巻「授業づくりスタートブック」(教育開発研究所)2003 5月