学習計画づくり 授業のどこをどう変えるか

 オリエンテーションをどこでどう入れるか 

 

 ┌─オリエンテ-ション────────────┐ 
 │ あることがらの方向づけ。進路・方針の決定 │ 
 └──────────<旺文社 国語辞典>──┘ 
 「オリエンテ-ションをどこでどう入れるか」が私に与えられたテ-マである。つまり「学習計画づくりの方向づけをどこでどう行うか」である。  

 
 国語などで、単元の最初に子ども達から課題をさがさせ、その課題をみんなで考えていこうという形式を目にする。
 以下に述べる「わたしたちのくらしと商店街」(3年生)の単元でも、「ス-パ-の工夫について調べてみたい事は?」という導入で入る方法をとられている方もいる。        
 しかし、私は、そのようにはしない。
 社会科ぎらいを作る授業としては、推薦するが‥‥‥。         
 樋口編集長は言う。        
「物事をとりあえず自分の頭で考えてみる『出力型の授業』こそ、創造性の育成につながる教育の基礎基本ではないかと思います。」         
 同感である。           
 私は、子どもからの発信を授業の中に取り入れ生かしていくことが新学力観に迫る方法だと考えている。
 授業の方向づけは、授業での子ども達の「はてな?」で行うようにしている。特に、社会科の場合は、その日の授業後の追究が、翌日の授業をきめることを目標としている。
┌──────────────────────────────┐ 
│「はてな?」の追究で、授業に連続性を持たせること      │ 
└──────────────────────────────┘ 
 私の授業の目指す所である。
 学習計画づくりという本テ-マからは逸脱しているように受けとられるかもしれない。しかし、言い換えれば、この学習は「子ども達が小さな学習計画をもち追究し続けていくこと」なのである。その観点にたって以下に述べる。

 

※実践から             
3年「わたしたちのくらしと商店街」【ス-パ-の工夫を調べる】 
<授業で>             
 最初の時間、教科書を使って大型店(ス-パ-)と商店の違いを確認しながら、お店について話し合った。子ども達は、どこにどんな店があると、楽しそうに発表してくれた。授業の最後で、
『ス-パ-には、やさしい人ばかりが選ばれて勤めているのです。ただで物をくれるやさしい人さえいます。』  
と話す。すると、          
「そんなことはない。」       
「うそつき~。」 

 という声の中、 
「先生、それ試食でしょ。」     
「おいしいですよ~って言って、食べさせてくれるところでしょ?」    
 数名の子が楽しそうに話し始める。不思議そうな顔をして聞いている子もたくさんいる。            
「ただでくれるの?」

「先生、本当?」
『どういう所にあるの?』      
「食べ物を売っている所。ヨ-クで、ウインナ-を食べたよ。」      
『よつばにもある?』        
「ないよ、そこには。」       
「電気を使う物を売っている店だから。」
┌───────────────────────────────┐
│ 試食に対する大きな?を与え、オ-プンエンドで授業を終える。    │
└───────────────────────────────┘
<終わりの会で>          
 連絡で、次のように話した。    
『今日は、先生からみんなにプレゼントがあります。すばらしい宿題です。(エエ-ッ)試食を食べてくることです。(ワ-イ)お家の人が買い物に行く時にくっついてって、いっぱい食べてきてください。(すごい)(でも、お母さん、仕事の帰りに買ってきちゃう‥‥‥)市内の学校のきまりで、みんなは、お家の人と一緒でないと大型店には行っていけないことになっていますが、特別に友達同士でもいいこと
にします。』

(うわ-い!)(やった-)(先生、カッコイイ!)
「そんな宿題でいいの?お母さん信用しないよ。」
『んじゃあ、お店の様子も見てきて日記に書いてくればいいよ。』
「いっぱい食べてもいいの?」
『これは、立派な宿題です。どうどうとしてきなさい。』 (ワ~イ)   
 ┌──────────────────────────────┐ 
 │ 朝の会や終わりの会は、授業のオリエンテ-ションの貴重な場と│ 
 │考える。特に、社会科の授業のない日には、子供達の書いてきた日│ 
 │記を読んだり、調べてきたことを聞いたりして、子供達の追究を深│ 
 │め、そして、広げていく場とする。              │

 └──────────────────────────────┘ 
 試食は、有田和正氏の有名な実践である。「ス-パ-の工夫を見つけてこよう」という教師の指示なしにも、子ども達はス-パ-に足を運び、その目でいろんなことを見つけてくる。   
 楽しい事は、子ども達の活動を導く。木曜日という平日にも関わらず、たくさんの子が試食を食べに行った。  
┌─8月31日(木)──────────────────────┐
│ ヨ-クには、ししょくコ-ナ-があります。わたしは、とくにか│
│にのフライがすきです。でも、このごろないようです。ガ-ンとが│
│っかりきます。‥‥<中略>‥‥│
│ 夜におかあさんとヨ-クにいきました。ししょくコ-ナ-でかに│
│のフライをさがしたら、ありました。パクッ!おいしかったです。│
│ わたしは見た!まえにおばさんがいました。へやに入っていまし│
│た。なにしているのかなあと思ってみてみたら、フライをあげてた│
│ようでした。じゃあ、いまわたしがたべたのは、あげたて~やった│
│あ。ず-っとおいといてかびないのと思ったら、おかあさんが、 │ 
│「大がた店はとりかえるのよ」といっていました。       │ 
└────────────────────Yさんの日記────┘ 


 Yさんの発表から、ス-パ-にはかくれた所に部屋がある?試食はどうして作り立て?古くなった試食品は?店員さんは何をしているか?などの「はてな?」が生まれた。        
 一人一人が見学してきたことを授業で発表し、みんなで話し合うことから、また新しい「はてな?」が生まれる。追究が連続する。          

 ┌─9月1日(金) ────────────────┐  
 │  今日、Mちゃんと、Tさんと、Kちゃんとわたし、4人 │  
 │でヨ-クにいってきました。ヨ-クには、Lくんと、N  │  
 │ちゃんがいました。お母さんときていました。ヨ-クの│  
 │人が、わたしたちにやさしくおしえてくれました。そし│  
 │て、ヨ-クの人に、こうききました。「にんずうは、な│
 │んにんですか」そうしたら、「だいたい380人です」 │ 
 │といいました。わたしはびっくりしました。     │  
 │ つぎに、し食コ-ナ-にいってきました。そこには5│  
 │つもありました。  ‥‥<中略>‥‥                             │ 

  │ヨ-クではたらいている人は、ぜんいんネ-ムをしてい│  
 │るんだそうです。小さい子もよめるように、ネ-ムはみ│  
 │んなひらがなだそうです。ヨ-クができたのは、へいせ│  
 │い2年5月23日だそうです。‥‥‥‥‥‥‥‥               │  
 └────────────(Hさん)────────┘  

 前日の授業で出た「店員さんはネ-ムをしてる?」に対しての追究である。さらに、店員さんの服装について話題が広がって行った。         
 いい調べ方、店員さんへの質問の仕方は、上手な子供に「どうやって調べてきたの?」とみんなの前で聞くことによって、全体に広げて行く。    
 授業の方向づけは、単元の最初に行い、その後は少しずつ調べていく。そういう授業も時には必要だとは思う。しかし、時間をあけると、子ども達にとって、それは、させられているという意識がでてくる。新鮮味が少ない。 
 ┌───────────────┐  
 │ 体験→はてな?→追究(体験)│  
 └───────────────┘  
 この繰り返しを、子ども達の手で行えるようにさせたい。         
 昨日調べてきたことを発表することで、みんなで考え、新しい?が生まれ、みんなの追究が始まる。授業を自分達で作っている。そう子ども達が自覚し始めた時に、初めて、子どもの側に立つ指導が存在するのではないだろうか。  
 方向づけは、毎時間、絶えず子ども達に意識させながら授業を進めることが大切である。            
 有田学級のはてな帳は、授業の方向づけをしっかり行っていた。有田氏が、「朝、はてな帳を読んで、その日の授業を決めることもある」と言われたことを思い出す。

 子どもからの発信を生かして授業を方向づけていくことが教師の支援である。
 ┌─9月9日(土)──────────────────────┐ 
 │ 今日、ジャスコに行きました。し食を見てから、サ-ビスカウン│ 
 │タ-の人にたのんで、そうこを見せてもらいました。まず、ジュ-│ 
 │スをおいてある所を見せてもらい次にすしを作っている所を見せて│ 
 │もらいました。それで、すしを食べさせてもらいました。わさびが│ 
 │きいてて、なみだがでました。さいごに、魚をさばいている所を見│ 
 │せてもらいました。                                                                   │ 
 └───────────────────────Oくんの日記─┘ 
 すしの話はみんなの喝采を受けた。友達と一緒にここまでしてしまう。こういう子の存在が、やがて、市場見学を、子ども達だけで計画・実行することにつながった。
 学習計画は、子ども達の手によって、絶えず変化していくものでありたい。

 

 「社会科教育」(明治図書)1996 5月号